輝く水平線

【連絡】10　★ ページ10

『…いいだろう。では１ヶ月後に。』

するとすんなり通って譲歩してくれた。
いや、そうじゃねぇだろ俺。

「そもそも娘さんは了承してるんですか？」

それでもなんとか自分の気持ちを酌んで欲しくて、遠回しに探りをいれるのだが…。

『あの子は私の言う通りにする賢い子だ。』

「……。」

もしかして流されて生きるタイプ…。苦労知らずのお嬢さまなのか。
今時お見合いなんてするやついるのかと思っていたけど、どっちにしろ苦手なタイプだろう。

『とにかく１ヶ月だ。それまでにきちんと親にも話を通しておきなさい。いずれ挨拶に伺うよ。』

そして、頼んだよ。と言いたいことだけ言って切られてしまった。

「人の話を聞けっつーの。」

携帯を耳から外し、吐き捨てるように呟く。

「あーもう…めんどくさい。」

せっかくのオフに水を差すんじゃないとばかりに、ベッドにぽいっと携帯を放り投げ、そのまま仰向けに寝転ぶ。

そして、どうやら避けて通れないお見合いの攻略法を頭の中で模索してみるのだが…。

要するに、相手の子に嫌われればいいんだ。
こうなったら向こうが呆れるくらい、自分本意なスケートの話ばかりしてやろ。

独りよがりでちょっとマニアックな部分でも見せておけば大抵の女性は引くだろう。
世間のイメージと違う部分を見せつけてやる。

「あんま気が乗らねぇけど。」

天井を見つめつつ、はっと息をはく。
誰も好んで嫌われるやつなんていない。
でもこれで羽生結弦のイメージが地に落ちても、結婚させられるよかましだ。

「結婚なんて向いてない。絶対に。」

少しの決意をもって呟く。
自分の性格は自分が一番良く知ってるんだ。相手のためにも、俺は結婚はしない方がいい。

「ま、一応失礼がないように、お見合いの流れだけでも調べとくか。」

とはいえ、最低限の対応はしなきゃ。
手ぶらで行くのも気が引けるし、お土産くらい渡した方がいいよな。

俺はベッドの隅に転がっている携帯を再び手に取った。






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