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【8時2分】5 ★ ページ10

★結弦サイド

Aのやつ、看護師さんに何吹き込んでたんだか。

偶然居合わせてよかった。
子供?拗ねる?そんなイメージが定着してたまるか。
羽生結弦はいくつになっても、清く正しい人物であり続けなければいけないのだ。

よーく言っとかねぇとな…と思っていたのだが、Aは今、それどころではないらしい。

「ぐ…ぐぬぬぬぅ…!!」

「そんなに歯を食いしばると良くないよ。」

「ぎぃ…いい痛い。」

個室に戻って昼食をとった後、部分麻酔がきれたらしく、痛みに悶絶しているのだ。
それを見守ることしかできない俺とお母さんは、ただただ苦笑い。

「今痛み止め飲んだでしょ。」

「そんなすぐ効かないし!」

なぜか怒りの矛先を向けられるお母さんが不憫だが、ここは耐えてもらうしかない。
しかし、出産って本当に大変なんだな。

「僕ちょっと翔と翼見てきます。」

「またぁ?!」

「うん。しばらく会えないから。」

さっきから何度も新生児室へ行っている俺なのだが、明日からコンティニューの最終打ち合わせで東京へ行かなければならないので、今日しかゆっくり我が子と対面する時間がないのだ。

自分だけずるい!と叫ばれるけど、これくらい許して欲しい。

「私も行く!」

「そんな身体で?いや、無理でしょ。」

そんな大声で痛い痛い言ってたら、他の患者さんに迷惑だ。

「大丈夫だもん!」

「A、せめてもう少し痛みが引いてからにしなさい。」

お母さんにたしなめられている間に一人で部屋から出る。
Aと一緒にいてやりたいけど、双子たちも気になる。少し痛みが落ち着いたら連れて行ってやろう。

「翔と翼、どうしてるかなー。」

ぱたんと両手で扉を閉め、誰も見ていないのをいいことにスキップで廊下を進む。

赤ちゃんたちがいるのは角をまがってすぐの所。
ガラス張りの部屋は、面会時間内はいつでも見ることができる。

「ふふふ。いたいた。」

うちの子は他の子より小さく、二人とも保育器に入っているのだが、今翔は一生懸命声を上げて泣いていて、まるで自分の存在をアピールしているみたいだ。

「…奇跡だな。」

思わず顔がにやける。

お腹の中で細胞が何度も分列して、遺伝子を受け継ぎながら形になる。
そうやって、俺たちの子供として生まれてきてくれたことに、ありがとうの気持ちしかない。

「にしても、対照的だな。」

ガラスにそっと手をあて、よくよく二人を眺める。
ほわほわと泣く翔に対し、弟の翼はすやすやとおやすみ中。

【8時2分】6 ★→←【8時2分】4 ☆



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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。  大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時

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