赤と黒のLiberations16

【家族】4　★ ページ15

「将来はイケメン兄弟ですね。スケートはさせるんですか？」

ふと看護師さんが、準備をしながらAに問いかけた。
すると…。

「はい、もちろん！」

満面の笑みで即答するA。
それに否定も肯定もせず、俺はただじっとAの腕に抱かれた翼の顔を見つめる。

別にいいんだよ。しなくても。
スケートは血筋じゃないから。

スケートは、技術だけでなく、想いも繋ぐもの。
我が子でなければならない理由なんてない。

二人には思い切り人生を楽しんで欲しい。
そして、もしもスケートがしたくなったら、いつでも扉を叩いて欲しい。

その時は、全力でサポートするからね。

「翔は何してるのかな。」

授乳をガン見するのも何なので、もう一人の様子を見るために立ち上がる。
まだ寝てるかな？上から顔を覗き込んだら…。

「起きてたのかー。」

ぱちっと目を開けて、万歳するように両腕を上にあげていた。
心なしか笑っているようにも見える。

「ふふふ。」

どっちもかわいい…。
思わず人差し指で頬っぺたをつんつんすると、一生懸命身体を動かして反応しようとしてくれる。

「お兄ちゃんだぞ、頑張れ。」

ほんの少し先に生まれただけで長男だけど、そんなの関係なく、二人で力をあわせて仲良く暮らしてくれればと思う。

しかし…なんて幸せな空間なのだろう。赤ちゃんがいるだけで、無条件に心の中が新しい気持ちで満たされる。
まるで自分が、違う人間に生まれ変わったような気さえする。

生きていくことは、大切なものが増えていくことなのかも知れない。
人と人とが繋がって、想いを重ね、悲しみの中でも支えあえるように。

羽生結弦の子供として生まれたことで特殊な運命に翻弄されるかな…。
いや、そこは親である俺たちが正しく導いていかなきゃ。
俺たちは、未来永劫家族なのだから。

運良く繋ぐことの出来た命。
まだその先の未来まで、可能な限り続きますように…。





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