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【歩み】3 ★ ページ39

「ごめん、言い回しが難しすぎるから却下。」

「あっ!」

「戦々恐々とか意味通じんわ。」

「そう?」

Aから本を奪い、本棚の一番上の届かなさそうな位置に場所を変えて戻す。
こんなの二度と読ませるものかと、子供らしい本を取り出した。

「これ。くまのプーさん。」

迷わずAに差し出す。
これならカラフルだし、子供の情操教育にぴったりだ。

「いつの間にこんなの買ったの?」

「ファンからもらった。」

ちなみに同じのがあと6冊あったけど、さすがに寄付した。

「ふーん。じゃあ読もうか。森にすんでいるウィニーは…ウィニーって?」

「プーさんのこと。」

「そんな和名が付いてたの?!」

「違う。むしろ逆。もう俺が読むから貸して。」

Aが読んだらちっとも進まない。
俺は真新しい絵本を開き、折り目をつけ、見やすいように見開きを作った。
それを紙芝居のように向け、感情を込めて読み始める。

「森にすんでいるウィニーはハチミツが大好き。今日もハチミツを探しに出かけます。」

「パパ上手だね。」

Aが小声で子供たちとこそこそしているのを見守りつつ、続きを読もうとしたら…。

「あうー。」

「んまんま!」

赤ちゃん独特の言葉が聞こえてハッとする。

「今しゃべった!パパうまいって!」

「まだ5ヶ月だよ?偶然じゃない。」

「そんなことない。翔〜翼〜。いい子だねぇ。」

間違いない。今のは絶対『パパうまうま』だ。
この子たちは天才かもしれないなと、頭をよしよしと撫でる。

そうして。羽生家の午後は幸せな空間に包まれるのだ。

こんな日々がこのままずっと続くといいな。
子供たちが大きくなって巣立つまで、みんなが心穏やかでいて欲しい。

本の続きを読みながら。
家族の存在をかんじて。


ちなみに、これから先の未来を少しだけお話しすると、今から三年後。俺とAの間には、女の子が生まれ五人家族になる。

そして翔は俺の意思を継ぎ、フィギュアスケートの世界へ。
妖怪体質の翼はAの神社を継ぐのだ。

別々の道を歩む二人が、今後どんな苦難に立ち向かうのか…。
それ以上はご想像におまかせしようと思う。

とにかく子供たちが幸せな人生をおくれるように。
つらい時に助け合えるように。

血を分けあった家族として。
白狐でも安倍晴明でもなく、羽生結弦とAとして、これからもずっとずっと支えてあって生きていこうと強く思った。





終わり





.

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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。  大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時

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