赤と黒のLiberations8

【後悔】6　★ ページ27

「あ。頬っぺにちゅーまだだった。」

そんな中、Aがわざとらしく昨日のメッセージを絡めた発言をする。

「今はいい。」

「どうして？今しかなくない？」

「どうしても。やっぱ俺隣のベッドで寝るわ。」

不本意だけど仕方がない。
今そんなことをされたらきっと自制心がもたないだろうから、Aを傷付けるのは目に見えてる。

「つまんないの…。」

「お前、まさか飲んでる？」

発言があまりにもいつものAらしくないので、眉間にシワを寄せて怪訝な表情を作り尋ねる。
まさか待ってる間にお酒でも飲んだのだろうか…。

「飲んでないよ。飲んでないけど…。」

今度はうつむきがちなA。
そのどことなく寂しそうな様子に、ここは一旦ブレイクタイムをとることを提案する。

「ならちょっと落ち着…」

「せっかく二人きりなんだよ？時間を無駄に過ごしたくないの。」

「……。」

落ち着けと言おうとしたら、すごく意味深な内容を喰い気味に返される。
そしてすぐに、自分はこれをどういう方向に捉えれば良いのだろうかと頭をフル回転させる。

「私、羽生くんが日本を離れる時、すっごく後悔したの。あんなにいつも一緒だったのに、思い出に残るようなことほとんどしてないなって。」

「……。」

「だから、せめて今夜だけ。思い出を作りたいなって…。」

思い出という言葉に、頭の中で色んなシーンを当てはめる。
でもAがどういうつもりで言っているのか、具体的にはまだ想像できない。

「それは…一緒に寝るとか？」

だから無難な例を挙げたのだが…。

「それもあるけど、もっとこう…キスとか。」

「ぶっ！」

返ってきた内容があまりに具体的すぎて吹いた。

「とりあえず頬っぺからどうかな。」

「……。」

何言ってんのこいつ…。
これは夢か？まぼろしか？

Aがそういうキャラじゃないのは良く知ってるつもりだ。
こんなにがつがつ来られたら、逆にものすごく戸惑う！

「そっち行くよ。」

そう言って自分がいる方のベッドに移動しようと身体を起こす。

「待て待て待て。」

「待ったないよー。」

そしてついには変な節をつけてこっちへジャンプしてきた。

「わっ！」

「羽生くんっ、つっかまーえた。」

「お前…。」

「優勝おめでとう。大好きだよ！」

抱きしめられたら、右頬がかわいい音をたてた。






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