赤と黒のLiberations7

【日本にて】6　☆ ページ22

☆主人公サイド

お母さんとまどかが家に帰って来たので、晩ご飯の湯豆腐を食べようと準備をしていると、お母さんが一人でキッチンへ入ってきた。

「おかえり。まどかどうだった？」

しんどくて晩ご飯を食べるのは無理そうかな？と思っていると、お母さんが残念そうにこう言った。

「それが…あの子インフルエンザにかかったみたいなのよ。」

「え！インフルエンザ？！」

「熱が下がってからも三日間外出禁止なの。お姉ちゃんもまどかに近付かないでね。」

流し台でお母さんが手を洗いながらさらっと言うのだけど、五日間ということは大事な週末を挟んでしまうのでは？

「ちょ、ちょっと待って。あの子が楽しみにしてたスケートの試合は…？」

金曜日から始まるＮＨＫ杯。
まどかは土曜日の男子フリーを見に行く予定だったはず。

「さすがに無理よって言ったんだけど、そしたらあの子車の中で泣いちゃって…。」

今もだけど…。と、お母さんもまるで自分のことのように残念がっている。

「それはかわいそう過ぎるよ…。」

まどかがどれだけ羽生くんに会いたかったか…。
その気持ちが分かるから、私も泣きそうなくらいに悲しい。

「一応チケットはお姉ちゃんに渡すってことで納得したみたいなんだけど…。また次全日本を狙うって涙ながらに言ってたわ。」

「ふーん…へ？！」

私に渡す…？
思いもしない展開に、目が点になる。

「お見合いは次の日でしょ。せっかくだからフリーの羽生くんを目に焼き付けてきて。」

「……。」

タオルで拭いた手をぽんと私の肩に乗せて、お母さんが眉をひそめる。
こ、これは…。まさかの棚ぼた的にチケットが手に入ってしまったのでは…。

「本人に教えてあげたら？会場で応援しますって。」

そんな中、今度は肘で小突かれながら、冷やかすように言われる。
でも今は関係が上手くいってないとはさすがに言えないので、ここは濁す。

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