赤と黒のLiberations6

【優しさ】5　★ ページ30

「そんなんロックかけてろよ。」

自分じゃそんなミス絶対にあり得ない。こういう所もガードがゆるいけど、妹もかなり大胆なことをするキャラだな。

『推しに対する執着心が凄すぎるんだよ…。』

「そんなに好きなの？その推しもきっと喜んでるよ。」

ここで俺はわざとらしく知らないふりをする。
Aはバレてないと思ってるけど、その推しがこの俺だということは、すでに把握済みだ。

『私は文句言ってやりたいよ。』

「ほほー。何て？」

『…せめて卓上カレンダーだけ発売してよ、とかさ。』

なんだそれ。発想が幼稚園児並だ。
　
「安い方だけかよ。で？Aはまたインコにするつもり？」

来年のカレンダーの話題は早いけど、今年も例年通りにするのであれば、ちょっと意見しなければならない。
自分としてはそれより相応しいのがあると思うのだが…。

『え、まだ決めてない。』

「飾らなきゃいけないカレンダーがあるんじゃない？」

『え？』

ここでちょっと意味深な言い方で追い詰めてみる。
この世に彼氏のカレンダーが存在しているレア感を噛み締めて欲しいからだ。

「いっつも眺めてたらさ、寂しくないでしょ。ほら。」

『まさか羽生くんの？！嫌だよ、私は動いてしゃべってる羽生くんが好きなの！』

止まってるのは嫌！と変なこだわりを述べる。

「そうなの？素直じゃねぇなー。」

『私は羽生くんとこうしてテレビ電話してる方がいいんだもん…。』

上目遣いのAにちょっとドキッとしつつも、それは自分も同じだから内心にやつく。

「まどかちゃんは俺のカレンダーなんでしょ。」

『うん。でもまだ見せてもらってない。』

「ごめんな、俺のカレンダー４つもあって。」

『ほんとだよ。……ん？』

わー！！と画面の向こうが突然騒がしくなった。
やっと気付いたか。

「そのうち４個共買わされちゃって、ね。」

『気付いてたの？！』

「当然じゃん。」

俺の洞察力を見くびるな。

『バレた！恥ずかしい！もうやだ！』

「あはは。いいじゃん。Aにも飾って欲しいなぁー。」

『……。』

「インコはさ、また別の部屋に飾ってよ。」

ね？と軽く小首と狐耳を傾げてお願いする。
関係ないけど、頭の耳もかなり自由に動かせるようになったのだ。

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