【幕開け】6 ☆ ページ44
☆主人公サイド
携帯の通信を切って、しばらくベッドの上でぼーっとしていたら、一階で電話の鳴る音が聞こえてはっと我に返る。
何回かそのまま鳴った後、お母さんが取ったのだろう。不意に音が鳴り止んだ。
そして、ほんの数分前のやり取りを反芻して、彼ともう会話することもできなくなってしまったことを実感する。
「羽生くん、もう連絡くれないんだ…。」
毎朝二人だけの時間を過ごすことが楽しみだったし、遠く離れていても毎日顔を見せてくれたり、好きだって態度や言葉で示してくれて、本当に幸せだったのに。
「う…。」
なんだろう。今とても寂しくて、涙が止まらない。
ずっとこのままこの関係が続くと思っていたのに、いきなりさよならを切り出された気分だ。
羽生くんの言いたいことはよくわかる。
スケートに集中したいから、私にかまっていられないのだろう。
「でも、いっつも突然…。」
トロントへ行くときもそうだった。
車の中でいきなり告げられて、今回も電話でいきなり…。
「ひどいよ…。」
ぎゅっと目を閉じたら、涙がぱたぱたと落ちる。
羽生くんは世界的スケーターであり、国民の希望。
日本中、その名を知らない人はいないくらいの大スターだ。
そんな人と普通の恋愛などできるわけないと頭では分かっていたのに、いざそうなったら心がついていかない。
現に今、電話を切ってから改めて考えると、羽生くんの言うシーズンの終わりがいつなのか、はっきりした日にちさえ教えてくれなかった。
そんな状況で、私は一体いつまで待てばいいのだろう。
「何よ…自分ばっかり平気でずるい。白狐になっちゃったって、知らないんだから…。」
結局羽生くんにとって、スケートより大事なものなんてないんだなと、心に何かがずしーんと重くのし掛かる。
一日は始まったばかりなのに、私はそのまま枕に突っ伏してしまった。
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鹿(プロフ) - るりさん» いまオータムのお話書いてるんですけど、まったく違う切り口で妄想を繰り広げます^^スカッとはしないけど、突っ込みどころ満載の楽しいお話にしたいなあと思っているので、また読みにきてくださいね。次回移行なので〜。幕開けはシーズンの幕開けかな^^ (2019年9月19日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - オータム色々ありますが、羽生さんの進む道を全力で応援です!!いきなり音信普通になるってきついですよねー、何の幕開けなんだろうとソワソワ、、。コウくんきたよー、どーなる!?試合後のインタビュー見ても羽生結弦は別次元にカッコイイ!! (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 紫って珍しいですよね。今回ニジンスキーによせてるんでしょうか。オトナルのデザインも素敵ですよね〜。とにかく全部の試合に出てほしい!全部構成変えてきそうじゃないですか。4Aも、陸では跳べてたよ! (2019年9月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - オトナルさんは首元を気にされてたみたいなので、マイナーチェンジがあるかも?ですね。オリジンさまは、まさかの紫!薔薇の精に寄せてくるとは!背中に付いている深紅と紫の薔薇。黒で施された羽モチーフ。羽生さんにしか着こなせないお衣装ですね! (2019年9月17日 11時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 紫ってちょっと地味?でも大人な羽生さんぽい気もします。グランプリシリーズが楽しみですね!^^早くプルさんのコメントが聞きたいです。好きな衣装は、ホプレガかな? (2019年9月15日 22時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年9月2日 17時