赤と黒のLiberations5

【花火】1　☆ ページ29

☆主人公サイド

とある８月の昼下がり。
今日も仙台は真夏日で、神社の境内に人の姿はない。

「これだけ暑かったら、誰も外にでないよね…。」

午前中に拝殿の掃除を終え、キッチンで昼食のお素麺をいただいていると、不意に出かける準備をしていたお母さんが困り顔で話しかけてきた。

「お姉ちゃん、そろそろまどかに宿題するように言ってくれない？もう夏休みも終わりだっていうのに、このところずっと部屋でゴロゴロしてるのよ。」

「あー、あれね。」

お素麺をつるっと口に入れて、あのバカな妹を思い浮かべる。

「何かおかしな病気かしら…。」

「心配しなくていいよ、ただの仮病だから。」

「夏バテじゃない？ご飯も少ししか食べないし。」

「少し食べてれば大丈夫。だいたい羽生くんがかっこ良すぎて寝込むとか、バカじゃない？」

そう、この１週間。羽生くんサイドからの爆弾は、まどかだけでなく、たくさんのファンの心を撃ち抜くくらい凄まじいもので、毎日多数の死人が出るほど…まぁこれは大袈裟だけど。

自転車アニメのコラボから始まり、時計のアンバサダーにチャリティーアイスショー、切手にチョコに枕にと、それはそれは怒濤の解禁ショーだったのだ。

「お母さんは時計の羽生くんが一番！」

「はいはい。」

お母さんがまた乙女のように目をキラキラさせている。

でもあのスーツ姿には私もびっくりした。
羽生くんがここへ来る時はいつもジャージだったので、画像を見た瞬間、まるで別人のようでドキドキしたのだ。

「彼から何か聞いてたの？」

ふと、お母さんが少し小さな声で尋ねる。
羽生くんの件に関しては、我が家では一応秘密事項なので、それなりの扱いをしてくれているようだ。

「…うん。一応。」

「あらー。お母さんにも黙ってたの？Aなかなか口が固いわねー。」

「私はなんでもぺらぺらしゃべるタイプじゃないの。」

羽生くんが私に色々教えてくれるのは、それなりに信用してくれてるからだ。
だから私もわきまえなきゃいけない。

「そうなの。じゃあ二人は上手くいってるのね。」

「まあね…。」

「良かった〜！」

喜ぶお母さんを見ていると、何がだ。と突っ込みたくなるけど、そこは口を出さずに再びお素麺を食べる。

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