赤と黒のLiberations

【困惑】2　☆ ページ2

階段を下りてすぐ、和風のインテリアでまとめられたリビングで、テレビに向かってあたふたしているまどかとお母さんを見つけた。

「どうしたの？！…って何二人で抱き合ってるの？」

想像とは違う様子に、入り口の扉を開けたまま立ち尽くす私。

「お姉ちゃん！羽生くんが試合前の公式練習で足をひねっちゃったみたいなの〜！」

「羽生くん？」

眉間にシワをよせつつ、とりあえず二人に近づく。

まどかは平昌オリンピックが終わってから、フィギュアスケートの羽生くんがいたくお気に入りで、最近よくスケートの動画を見ていたっけ。というか今日スケートがあるんだ。

「どうしよー…ロステレコム杯で勝ったら、初のグランプリシリーズ連覇なのにぃ。」

？？？

「連覇って、オリンピック連覇したじゃない。」

お母さんと二人でパレードまで見に行ったくせに。

「グランプリシリーズはそれとは別なの。こっからファイナルへ行って、全日本そして世界選手権なんだから！」

まどかが熱く語るには、つまりたくさんの試合が控えている中で、不幸にも怪我をしてしまったということかな。

「なーんだ、てっきり変なモノでも出てきたのかと思った。」

私も二人とは違うソファーに腰かけて、頬杖をつきつつテレビに映る羽生くんの姿を探す。
しかし、本人は裏に引っ込んでしまったのか、氷の上には他の選手がいるだけだった。

「やだぁ〜、ロステレ欠場かしら…。」

「羽生くんにとってロシアは特別な地だよ？絶対出るに決まってる。」

お母さんとまどかの会話は理解不能だけど、スポーツ選手にとって怪我はいただけない。

「大事にならなければいいね。」

「心配だなぁ〜、まどか拝殿で祈ってこよ。」

そう言って突然すくっと立ち上がって、まどかは家の敷地内にある社殿へ行ってしまった。

「羽生くんのことになると必死だよね。」

「勉強もあれくらい必死になってくれたらいいんだけどね〜。」

お母さんと二人で、妙に納得してしまった。





.

【困惑】3　★→←【困惑】1　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す