【世界一の君】4 ★ ページ4
「ゆづ、このまま落ち着いて聞いてね。」
「へ?」
俺の真ん前に立って、メダルを首にかけようと一歩前に出る。
内緒の話でもするのだろうか。
その真剣な表情に戸惑いつつ反射的に頭を下げた俺は、話の続きを待ちながらも表彰式っぽく振る舞うのだが…。
「Aが医務室へ運ばれたの。」
「えぇ!!」
告げられた内容に驚いて、思わず頭を上げて佳菜を凝視する。
「今とっても頑張ってるの。でもゆづはゴールドメダリストとしてのお仕事があるから、Aのことは私に任せて、しっかり自分の対応してよね。」
「ま、まじ…。」
固まってしまった俺に、佳菜が少し強引に金メダルをかけた。
Aが医務室に…。
ということは、子供が生まれそうだということか。
そっか、だからまっちーがさっき慌ててここに来たんだ…。
「私はこれが終わったら、慰労会には出席せずにAの所へ行くからね。自分の子供を生んでくれてる妻に、今度こそメッセージちょうだい。」
言い終わると同時に、物でもないのに右手を出してきた。
でもこれは、俺がすぐに側に行けないことを見越して、佳菜なりに気をきかせてくれているのだろう。
今自分ができることは、精一杯Aを励ます言葉を送ることだけだから。
「ちょっと考えるから、昌磨とハビにメダルかけてて。」
ゆっくりな!と表彰式にあるまじき発言をしてしまうほど、今は頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
…まず情報を整理しよう。
Aが医務室へ行ったということは、今日か明日に生まれるかもしれないということだ。
となれば、国として盛大に祝うと共に、国民にもお知らせ…いや、今は先のことよりAへ送る言葉を…。
「ゆづくん大丈夫?」
試合後の汗とは違う汗をかいているのが昌磨にばれて、本気で心配される。
「うわー緊張する〜…。」
「しっかりしてよ。それでも父親なの?」
「これが落ち着いていられるか。」
佳菜へ逆ギレのようなセリフを吐いてしまうほどテンパっているのが自分でも分かるのだが、励ましの言葉といっても、こんな経験初めてだから一体何て言えば…。
「頑張れ!は?」
「つきなみじゃね?」
せっかくだからもっと心にぐっとくる言葉を…。
「早くしてよ〜。」
「待ってよ!えーっとえーっと…。」
考えれば考えるほど、訳の分からない言葉しか浮かんでこない。
そんな中、ハビが拳で銅メダルのかかった胸をとんとんと叩いて…。
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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時