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【伝わってない】3 ★ ページ34

「そうだ、月の国の選手の演技を見たか?」

「え。」

不意に昨日の試合の話題になって、プルさんが前のめりになった。

「女子は特に躍進しただろう!」

そしていきなり得意気に話し始める。

「見てはないけど知ってますよ。おかげでこの国の女子は皆煮えたぎってます。」

さっとんも真凜も、これからどうすればいいのか今必死に考えいる。でもそれは、負けでしか味わうことができない、とても大事なこと。

「ユヅルの武器であるトリプルアクセルは、もう女子でも必要不可欠なジャンプになるだろうと思っていた。アクセルが跳べない選手でも、ルッツやフリップ、ループのように基礎点が出来るだけ高いジャンプをコンビネーションに入れなければならない。これは簡単にできることじゃないし、とても難しいことだ。」

「つかそれ男子並ですよ。」

そう熱く語るプルさんの言葉は、ジュニアの男子にそっくりあてはまるか、もはやそれ以上だ。
4回転が入れられるかどうかが、シニアへの大きな壁となるから。

でもそのさらに上をいく発言が出る。

「いいか、ユヅル。来季はおそらく試合でクワドを跳ぶ女子選手が出てくるだろう。」

「嘘でしょ…。」

クワドなんて…あんな体力のいるジャンプを女子が跳ぶなんて考えたこともなかった。

「嘘ではない。ユヅル自身も、不可能だとされてきたクワドアクセルを跳んだじゃないか。前人未到とは、それほど遠いことじゃない。」

プルさんが力説すると、自分がやり遂げた手前、本当にそうなる気がしてくるのだが…。

女子のクワドか…。
そんな夢みたいなことが本当に出来るんだろうか。

「じゃあ、女子の技術が著しく向上するとして、どすればいいんですか?」

一個人で練習してなんとかなるものじゃないだろう。

「どうやったら跳べるか。それは個人差がとても影響する。スケートは、人それぞれジャンプに対するアプローチが違うんだと、ここ数年で気が付いた。」

「アプローチ…。」

「ユヅルの跳び方を外の選手にさせても、それは正解ではないかもしれないということだ。だから、選手個人に合った指導が必要だし、それをいち早く見つけてあげられる、優秀なコーチが不可欠だ。」

言ってることはよく分かる。
一人として、同じ身体の人間はいない。骨格や筋肉の付き方、体格。微妙な差が、ジャンプの成功率に影響することだってあるだろう。

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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時

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