氷の国21

【作戦】6　☆ ページ42

「もう大ファンです。」

「変なのー。」

食べよ。と私のくだらない妄想を遮られてしまったので、ここはひとまず夕食をいただくことにしよう。

席に着いたら、いつものようにいただきますをして、まず佳菜子さまから頂いたサンドイッチを頬張る。

「美味しい…。」

甘めのソースがパンにマッチして何とも言えない。
さすがハマってるというだけあって、味は格別だ。

「米もいいけど、たまにはパンもいいね。」

そう豪快にかぶりつくゆづ王子の姿はまるで少年のようで、こういう振り幅が世の女性たちを沼にはめるんだろうなぁと想像しながら私ももう一口食べる。

「ゆづさん、佳菜子さまの所に行ってたんですね。」

「ん？あぁそうだよ。今度の会談についてどうストーリーを仕立てるかを相談してたの。」

「……。」

ストーリー…。
会談は国同士の駆け引きがとても重要な公務だ。
私など、今だかつて呼ばれたこともないので想像もつかないけど、きっと勝つための筋書きを念入りに作っていたのだろう。

「絶対いい仕事するよ、佳菜は。」

キャラ的に。と不意に良く分からないことをおっしゃる中で、それでも純粋にすごいなと思う。

「でもストーリーって一体…。」

「それはこれからもっと詰めてく。」

まだ序盤。と言ってさらにもぐもぐとサンドイッチを頬張る。

今回は昌磨さまも助けなきゃいけないし、眠りの国の会談がキーポイントになるのはなんとなく分かるけど、佳菜子さまが同席となると…。

「やっぱり大変なことになるのでは…。」

「え？何か言った？」

「いえ、何も！」

大丈夫かなと心配になったけど、まるで佳菜子さまを信用していないような言葉は控えるべきだった。
正室さまなのだから、公務として行って当然だし、これは妥当な判断だ。

「Aはお留守番お願いね。まぁそんな身体じゃ行くのは無理だけど。」

なるべく早く帰ってくるね。といつもみたいに優しく微笑んでくれる王子さま。

私が出来ることは、良い結果になるよう、幸運を祈る事だけのようだ。





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