氷の国21

【作戦】4　☆ ページ40

☆主人公サイド

ゆづ王子が突然温室からお仕事へ行ってしまわれた。
その緊迫した雰囲気に押されて、私は本を読むのをやめ、そのまま一人部屋へ戻りソファーで少しお昼寝をしたのだが…。

「寝すぎちゃった…。」

ふと時計を見ると午後７時。気付けば辺りはもう暗くなっていた。

「ゆづ王子が帰ってきちゃう。」

早ければいつもこの時間に戻ってくるので、慌てて少しだるい身体を起こし身なりを整えると、タイミングよく部屋の扉が開いた。

「ただいま。」

「お、お帰りなさいませ。」

良かった…。かろうじて寝顔を見られずに済んだ。

出迎えると、いつも通りの落ち着いた声と共に部屋の中へ入ってくるゆづ王子。
しかし今日はその右手に、何やら袋のようなものを持っているのに気付く。

「これおみやげ。一緒に食べよ。」

すると私が尋ねる前に小さな袋が差し出される。
そのまま受け取って、中身を言われるがままに開けてみると…。

「これは…。」

「サンドイッチ。佳菜が最近ハマってるお店のなんだって。」

ふと、ゆづ王子の口から久しぶりに正室さまの名前が出てくる。ということは、佳菜子さまのお部屋からここへ戻ってきたのだろうか。

「ありがとうございます。」

ともあれ、サンドイッチなんて嬉しい。

「お茶何がいい？」

淹れるよ。とキッチンへ向かうゆづ王子を慌てて止める。
お疲れだろうに、さすがに夜くらいゆっくりして欲しい。

「それは私がやりますので、座っててください。」

ずっと眠っていた手前、少しは身体を動かさないと。
私はサンドイッチを持ってゆっくり立ち上がり、お茶の準備に取りかかる。

「じゃあカップカップ…。あった、これでいっかな〜。」

それでもお手伝いをしてくれるゆづ王子は、温室で分かれた時の雰囲気はどこへやら。とても機嫌がよさそうにカップを並べてくれるので、これは良い進展でもあったのかなと想像する。

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