氷の国14

【違うのに】6　★ ページ6

まてよ…。
普段からそんな会話が飛び交ってるような場所なら、もしかしてAがここを通った時も、使用人らが何らかの噂話で盛り上がっていたのではないだろうか。

そして、それを聞いてしまったがために、Aがあんなことを言い出したのだとしたら…。

黙って俺を見つめる佳菜に、確認の意味を込めて話を切り出す。

「ここ…夜でも人いるよな。」

「え？そりゃ２４時間体制だからね。」

「じゃあ、昨日Aが通った時も…。」

「いたと思うけど…。」

疑惑がだんだん確信へと変わってゆく中で、険しい表情のまま歩みを再開して自室へと向かう。

これは…ちゃんと話し合わなきゃなんない。
内容は定かではないけど、Aがここにいる使用人達のくだらない話を聞いてしまったのだとしたら、それをフォローしてやらないと。

俺はずんずんと廊下を進んで、入りくんだお城の構造を網羅しつつ自室にたどり着く。

そしてノックもせずに部屋に入り、さらに数時間前までAがいた寝室の扉を勢い良く開けた。

「A！」

まずベッドに視線を向けて、次に窓際を見る。
どこだ、どこにいる？！

「A…？」

後から入ってきた佳菜が、俺の身体を盾にして、覗くように中の様子をうががうのだが…。

「いない…。」

俺が出ていった時は開いていたカーテンも、今はしっかり閉められている。

「どこ行ったのかな…。」

さっきまで城出だなんだと言っていた佳菜も、ちょっと現実味をおびてきた展開に、さすがに今はおとなしい。

「佳菜、手分けして探そう。きっとお城の中にいるはずだから！」

「ちょ、ちょっとゆづ！！」

佳菜の返事を待たずに、どう見ても人の気配のないこの部屋を出て、全力で城内を走る。

温室かリンクか。
Aの行きそうな場所は限られている。

どこだ、どこにいる？！
もう二度と離さないって誓ったのに、なんでこんなことになんの！

すれ違う人に怪訝な顔で見られながら。
かけられる声も全部無視して、俺はAだけを求めて走り続けた。






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