【日が暮れて】1 ☆ ページ10
☆主人公サイド
まだ腕にゆづ王子の感触を残したまま、私は外へ出る夫の後を付いていく。
これで一週間お会いできない…。せめてそのお姿だけでも目に焼き付けようと、足元が悪い中、必死に雪を踏みしめながら段差を降りる。
外はもうすっかり帰城の準備が整っていて、ゆづ王子は立ち止まることなく馬車に乗り込んだ。
待って!と叫びたくなるのをぐっと堪えて、その光景をじっと見届けるだけの私。
「……。」
馬車の窓からそっと顔を覗かせてくれたゆづ王子は決して笑顔ではないけれど、頑張って。と言われているようで、心の中がぴんとなる。
そして大輔さんの合図で動き始める馬車が、ゆっくりと私の視界から消えてゆき、ついには見えなくなってしまった。
「行ってしまわれた…。」
とたんに静かになってしまった風景を見たくなくて、思わずうつむく。
「Aさま?ここは寒いですから中へ入りましょう。」
すると、いつの間にか側にいた真凜が、お部屋の片付けも終わりましたよ。と優しく声をかけてくれる。
「そうだね…。」
一週間だけの我慢なのだから。
永遠の別れじゃあるまいし、私ったら大げさだ。
踵を返して真凜と塔の中へ入る。
そして一度ぐるっと見渡すと、ドアを開けてすぐの部屋は無良さんの待機部屋兼自室らしく、ここで一週間過ごすんだなと少し申し訳なく思う。
開けっ放しのドアからちらっと中を覗くと、小さな暖炉はあるものの、けっこう殺伐としていて寒そうだ。
「どの部屋の暖炉も小さめですね。薪もたくさんは有りませんから、昼間は出来るだけ一つの部屋にいた方がいいかもしれません。」
真凜の見解に、それが良いだろうな。と同意する。
「一階のもう一つのお部屋は…キッチンだね。」
さっきみんなで昼食を頂いた場所だ。
こうも狭くては、身分も関係なく、全員一緒に食べることになるだろう。
私は構わないけれど。
「この真上が私の部屋なので、何かあったら遠慮なくお呼びくださいね。」
真凜がかわいく説明してくれる。
「ありがとう。さぁ、まず何からしようか。」
いつまでも落ち込んではいられない。
塔に着いたものの、決められた規則もなければ出かける訳にもいかないので、いきなり手持ちぶさたになってしまう。
するとキッチンの奥にいたジョニーさんが明るく話しかけてきた。
「さぁレディー達、長旅疲れたでしょ。まずは座ってお茶しながら、あなた達のことを聞かせてくれないかな。」
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鹿(プロフ) - yukiさん» 本当ですか?!うれしいです!!ひとつ、里帰りする話でも書きたいなーと思ったのですが、すんごい長くなりそうで今だ執筆に至っておりません(笑)ファンタジーは設定を気軽に無視できるので、書いてて楽しいです! (2022年1月1日 8時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - このシリーズが、大好きです。番外編とかあったら読みたいです。 (2021年12月30日 23時) (レス) id: e391a6e98e (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私もリアルタイムで見てました\(^o^)/ノーミスしてさらにその上の事をしないと上位にはいけませんね。ジャンプを後半に持ってきたり、繋ぎも大事何だなーと思いました。でもやっぱり羽生さんは別格だ(笑) (2017年12月24日 21時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 女子フリー、みんなの頑張りに涙が滲みました。バンクーバー五輪の代表選考で中野友加里さんとあっこちゃんとの勝負を思い出しました。うう〜、本当に2枠しかないの?辛いですね〜。2位の2枠目は坂本さんが優位かな、とは思います。さっとん、本当におめでとう!! (2017年12月23日 23時) (レス) id: e2f297e7a8 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 羽生さん。今年の運勢、健康面あまり良くないんですよね。来年頑張って欲しいですね(・∀・)全日本はたぶん…チラ見かな(笑)女子は気になりますね!!狐さんの正体、かなり先になりそう?! (2017年12月21日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2017年11月18日 0時