氷の国8

【指導】4　★ ページ33

★ゆづサイド

ジュニアはさすがにかなりのレベル滑れる子が多くて、じっくり見てあげたいくらいに出来上がっている子もいた。

特に最初に声をかけてきた友野くん。
彼はその中でも群を抜いてスケーティングスキルが高く、クワドを教えてくれと言う気持ちも良くわかる。

「そうそう、ゆーっくり膝を曲げて前に進む感じでね。」

個別に声をかけながら、みんなが個人練習に入っている中、そろそろいいだろうと思い、彼に声をかけてみる。

「えっと、友野くん？」

「はい！あ、一希でいいです！」

あら、そう？

「うん、じゃあ一希。一回クワド跳んでみて。」

実際に見なきゃ何処をどう直してあげなきゃなんないのか分からないので、ちょっと広い所へ連れていく。

「トゥループですか？サルコーですか？」

「どっちでも…じゃあトゥループ。」

元気な返事と共に一希が助走をつけて勢いよく滑り出す。
１９才っつってたけど、さっきまでハードな練習をしてた割には元気だ。

そして一希が充分なスピードに乗ってから、トゥをついて飛び上がった。

カーンと、そこそこ綺麗な着氷で降りる。
ふむ。悪くないけど？

「どうでしたか！」

一希がすぐにＵターンして戻ってきて俺の側でシュッと止まる。

「いいじゃん。」

「え！でもジュニアの試合ではなかなか点が伸びないです。」

点数か…。それは１個のジャンプだけ見ても決められる物じゃないな。
総合的に見ていかないと、取れるもんも取れない。

「今コーチは？」

「いないです。」

いない？
意外な答えが返ってきてびっくりする。
なぜなら、コーチなしで試合とかありえないからだ。

「え、じゃあ普段誰に教えてもらってんの？」

「僕最近、月の国からこっちへ来たばかりなので、まだコーチがいないんです。」

あぁ、そういうことか。

「ふーん。月の国から…。」

懐かしいな。
月の国だなんて、メドベデワを思い出すわ。

「なかなかこっちで師事出来ないからもやもやしてて…。今日たまたまこのリンクに練習しに来たら、王子さまが来るっていうじゃないですか！もうこれはチャンスだと思って！」

「何のチャンスだよ(笑)」

俺と出会った所でコーチが決まるかよ。

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