氷の国8

【指導】3　☆ ページ32

「王子さま…。」

なんだろう…。
他愛もない内容がほとんどなのに胸がいっぱいになる。

それに、離れている距離が逆にとてもいとおしくて、こんな素敵な夫を誰かに自慢したくてたまらなくなる。

嬉しい…。
側室の私をこんなにも気にかけてくださって、感謝してもしきれない。

いただいたお手紙を胸にあてて幸せに浸っていたら、ふと後ろから物音がしたので振り返ると、いつの間にか狐さんがを目を覚まして私を見ていた。

「起きてたの？」

手紙をテーブルに置いたままにして、暖炉の前まで歩み寄る。

う〜…と短くうなられたけど、なんとなく怖さがなくなったかな。
触れることはできない中でも、側まで行ってしゃがみこんでなんとなく話しかけてみる。

「痛くない？」

包帯を巻いた左足を気にしながらも箱の中で丸くなっていて、それがまるで犬みたいでかわいい。

「あのね、さっき私の夫から貰ったお手紙を読んでたんだけどね。」

なんとなく。
本当になんとなくだけど、普段他人にしないようなノロケ話をただ誰かに聞いて欲しくなって、あろうことかそれを狐さんに委ねる。

「彼…ゆづさんって言うんだけど、すっごく格好良くてスケートが上手で頼りになって…。」

人間の言葉が理解できないのをいいことに、さらに続ける私。

「元々は決められた結婚だったのに、私、ゆづさんのことが大好きで…。幸せなんだよね…ふふ、こんなこと狐さんに言っても仕方ないか(笑)」

ここまで言って、ちょっと…いや、かなりすっきりした。
こんなこと本人や周りの者達にはとてもじゃないけど恥ずかしくて言えない。

狐さんにちらっと上目遣いで見られた気がしたけど、気にせずまた手紙が置いてあるテーブルまで戻る。

さぁ、お返事を書かなくては。
内容は勿論、ゆづ王子からのお手紙のお礼と…この白い狐さんのことかな。

一週間もすれば怪我も治るだろうし、その間頑張ってお世話してあげなきゃ。

「あ、名前つけようかな。」

きっとその方がわかりあえる気がする。
えっと、白い狐だから…。

「シロ…？」

ありがちかな？と思ったけど、それ以外思い付かないので、やっぱシロにしようと決める。

ゆづ王子にお教えしたら何て言われるだろうか。
想像して、ちょっと可笑しくなった。





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