【thirty後編】1 ☆ ページ41
☆主人公サイド
「何してるの?」
家に帰って来てなんとなくゆづの行動を目で追っていると、クローゼットの中をごそごそして何かを探していた。
「あ、あったあった。」
そう言って持って出てきたのは、手のひらより大きな箱一つとニットの入れ物一つ。
「何?それ。」
「へへ。」
リビングまで移動してソファーに腰掛けながら、まずはニットの方から開けると中から出て来たのは…。
「あ、金メダル。」
しかもオリンピックのマークがついてる!
「こっちが平昌ので〜、こっちはソチの。」
テーブルに並べて置いたかと思ったら、側にあるベビーベッドに寝かせていた翔くんをおもむろに連れてくる。
そして、はい。と私に抱っこさせて、ゆづがその金メダルの一つを手に取って翔くんの首にかけた。
「紐が長すぎだね。」
だらーんとなっているので、ゆづが手繰ってさらに長さを短くする。
「うん、似合う。翔、写真撮ったげよーね。」
そっと金メダルを翔くんの胸元に残したまま、iPhoneで写真を撮りだした。
「ねぇ、これってゆづがオリンピック二連覇したときのだよね。」
ゆづがぴろんとシャッターをきって、そうだよ。と教えてくれる。
「何かこれ見てると色々思い出すわ〜…。嬉しかったこともだけど怪我に苦しんだことも。だから翔をスケートの道に連れていってもいいのかなって正直悩む。」
嬉しそうに写メ撮ってる割には真面目なことを言う。
「どうして?ゆづが教えたら誰でも上手くなりそうなのに。」
「スケートは怪我も多いし、つらいことも多い。何度も壁があって、しんどい競技だよ。」
翔くんの頬をつつきながら慈しむように微笑むゆづが、なんだかいつもと違って見える。
「ゆづ…。」
「翔に俺と同じ思いをさせたくないっていうか…。」
オリンピックがよほどつらい試合だったのだろうか。私には到底想像できないけど、珍しく後ろ向きのゆづに戸惑う。
「翔くんを親子二代の金メダリストにするんじゃなかったの?」
「そうだけど…。実際大変だろうなって。」
自分の経験と照らし合わせているのかな。
確かに親としての心配な気持ちと、スケーターとして経験した苦労など、両方の視点から見たときに、きっと他の人には想像もできない様々なことを感じるんだろうな。
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みゅーちゃん(プロフ) - 鹿さん» はーい笑 (2018年8月26日 12時) (レス) id: 1cf252bae5 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みゅーちゃんさん» 気長にお願いしますね〜〜^^; (2018年8月26日 8時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みゅーちゃん(プロフ) - 鹿さん» そうなんですね。楽しみにしています! (2018年8月24日 17時) (レス) id: 1cf252bae5 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みゅーちゃんさん» 実は私も気になります笑 いつか書きたいのですが、なんにせよロシアで何するんだよっていう知識のなさが行く手を阻んでいます^^;羽生さんも世界へ行って何がしたいのか。コーチ的な?それともアドバイザー的な?謎です笑 (2018年8月24日 16時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みゅーちゃん(プロフ) - 完結してしまったんですね…。寂しいです。なんか正直ロシアに行った後が気になります笑 (2018年8月24日 2時) (レス) id: 1cf252bae5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2017年7月3日 16時