時間と距離を超えて6

【蹴り入れたい】7　☆ ページ46

「A、手伝いくらいなら遠慮しなくていいから言えよ？」

「…いいよ、一人で平気。」

まだ痣だらけの身体を見せられるほど、私は強くない。

「そっか。じゃあどうしても無理なら大声で呼んで。」

先入るわ。と言ってバスルームへ行ってしまった。




ゆづが上がった後、私もなんとか一人でお風呂を済ませて、洗面所で顔のガーゼを換える。

「何度見ても慣れない…。」

薬を塗って新しいガーゼを貼り付けて。
さっきは右頬を見られたくなくて、ソファーの右側に座ったけど…。

たぶんこれからもずっと、私は右側にしか座らないだろうな。
傷が無ければいいのに…とは今更思っても仕方のない事だから言わないけど、ゆづに見られるのだけは嫌だ。

「私でも引くもんな…。」

ま、いつか治るわけだし。
今だけだ、こんなネガティブなのは。

「A、大丈夫？」

なかなか出てこない私を心配してくれたのか、ゆづがドアの向こうから声をかけてくれる。

ちょうどガーゼも貼り終わったので、今出るとこ。と返事をする。

「お待たせ。ごめんね、占領して。」

バスルームのドアを開けると、お互いパジャマ姿で向き合う。
とりあえず洗濯機はスイッチを入れておいたので、朝には乾燥されて乾いているはず。

「あ、洗濯機してくれたんだ。」

「うん。これくらい出来る(笑)」

所帯染みてるのがおかしくて、笑ってしまう。
…まるでゆづと本当の家族みたいだな、と一瞬想像してすぐに掻き消した。

違うし！私は生涯独身を貫く予定なのに！
いくらゆづを好きでも、恋愛と結婚は別問題だから！

「なに百面相してんの(笑)」

「してないし。」

妄想していたことをゆづに知られたくなかったので、頬に手をあてて真面目な表情を作る。

今日はもう疲れた…少し横になりたいな、と思ってふと気付く。
…そういえば私、どこで寝るんだろう。

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