どうしても直接 ページ39
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無事に仕事も終わって自宅までの道のりを歩く。ごはん何も食べる気持ちにならないな、そのまま寝ちゃおうかな、なんて思って玄関からリビングの扉を開ける。
「おかえり」
『……え…界人、』
リビングの扉を開ければ、少し寂しそうな不安そうな顔をした界人がソファに座っていて。また急に動悸が早くなる、どうしよう。
『………ごめん、電話』
「あ、いや、それは、俺も、うん」
『……いいの?今ここ来ちゃだめなんじゃない?』
「たぶん、だめだけど。でも直接Aに話したくて」
『………やだ、聞かない』
「待って、A違うから、ちゃんと聞いてお願い」
『……やだ。明日、明日聞く、から』
どうしても一晩置いて気持ちを整理したくて、逃げるようなことを言いながら、彼に背を向けてキッチンに向かって歩きだす。
その瞬間、後ろからふわっと包まれるような温もりが背中に伝わって腰に手が回る。
『…………界人、離して?』
「……やだ、聞いて。お願い」
『……………』
「……撮られた子、とはまず何もなくて。」
『……………』
「あの日キャスト何人かで呑んでて、たまたま2人で出てきたところ撮られてて、タクシーも、方向が一緒だから一緒に乗った、」
『……………』
「酔ってたから、ちょっと支えてあげて部屋の前まで送り届けたんだけど、部屋には入ってないし、記事はマンション入るところで終わってたけど、あの後俺帰ったから、ほんとに、あの何もない。信じて、ほしい」
『…………そっ、か、』
「明日Twitterでちゃんと否定する、その前にAに説明したくて、」
『うん、』
ひとつずつ説明してくれる界人の言葉を聞きながら、安心していく自分に、不安だったことに気付かされる。急に緊張の糸が解けたみたいで、あ、泣きそう。
涙が溢れたとき、抱きしめられていた腕が少し緩まって、界人の方に回転させられて、目が合う。悲しそうな顔をした界人は、親指を目の下に這わせて。
「ごめん、泣かせて」
『……うん、っ、、ごめ、っ』
「はあ、ほんと俺のせい。ごめん」
『……不安、だった』
「うん」
『………もう、嫌いになっちゃったのかな、とか』
「そんなわけない」
『………飽きちゃったのかな、とか』
「飽きるわけないでしょ」
『……っん、んん、』
「ごめんね、ほんとごめん」
『っ、私も、ごめん、っ、』
そう言って抱きつけば、受け止めてくれて。
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シカク(プロフ) - まるさん» ほんとですね……(^^; わざわざご連絡いただいて、ありがとうございます。私が書いたものではないので、機会があれば聞いてみますね。いつも読んでいただき、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします。 (2021年12月7日 12時) (レス) id: c30e6dd602 (このIDを非表示/違反報告)
まる - お返事ありがとうございます。あまいハチミツという作品がお相手を良平さんに変えただけのようなかなり似た作品がありましたので気になってお聞きしました。シカク様の作品はどれも好きですので楽しみにしています^_^ (2021年12月7日 6時) (レス) id: 0cc1bb8b96 (このIDを非表示/違反報告)
シカク(プロフ) - まるさん» こんにちは。私が書いているものは、もしかしたら少し内容が似ているかもしれませんが、作品ページ以外にあるものは書いていませんよ(*・ω・*) (2021年12月7日 0時) (レス) id: c30e6dd602 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 他のお名前でミルクとスフレとに似た物は書かれていますか? (2021年12月6日 22時) (レス) id: 0cc1bb8b96 (このIDを非表示/違反報告)
シカク(プロフ) - 如月ヨシノ。さん» コメントありがとうございます!小説少ないですよね、自己供給してしまいました(笑)呼んでいただけてうれしいです! (2021年8月2日 23時) (レス) id: 8d6bdf9f88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シカク | 作成日時:2021年8月2日 18時