11時間 ページ11
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「___あ、お母さん。
このお皿、ドコにしまえば良いですか?」
「あら、じゃあそこの戸棚の中に入れてくれる?」
「悪いわねー」なんて言葉を背中に受け取りながら、私は食器棚の扉を開けた。
今は丁度、お酒のせいで動けない六子の代わりに食事の用意の手伝いをしていたのだ。
ただの食器の準備だけだけど。
私がカチャカチャとお皿の音をならしていたら、隣ではグツグツとお鍋が煮立つ音が鳴る。
その音に、お母さんは慌ててコンロの火を消していた。
「良いわよね、すき焼き。
家族で食べるなんて久し振りだわー」
「その家族水入らずに、私が入っちゃって良いんですか?」
「なに言ってんのよ。
Aちゃんも、もう家族みたいなものでしょ?」
ふと沸き上がった疑問を尋ねれば、お母さんはケロリとさも当然の様に答えを返してきた。
数秒考えて、やっと言葉の意味に気付く。
よほど顔の表情が明るくなったのだろうか。
お母さんは静かに微笑んでいた。
『家族』__なんて良い響きだろう。
自分に向けられた紛れもない好意に、思わず口元が歪んでしまう。
自分に向けられた優しさに、思わず目頭が熱くなってしまう。
自分に向けられたその視線に、胸の奥が締め付けられる様に痛くなってしまう。
ああ、なんで、どうして私が______
「___嬉しいです、ありがとうございます」
__やめよう。
こんな事を思ったって、未来は変わらないんだから。
『まだ生きていたい』なんて、
死んでも口に出してはいけないのだから。
___なら。最期くらい、笑顔でいようじゃないか。
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こころ - あれ?なんかスマホの画質悪く無い?……………あ、私の涙だ…(/ _ ; ) (2020年4月1日 18時) (レス) id: 68bb132a93 (このIDを非表示/違反報告)
霞桜 - とても感動した!!!!!!感動した (2019年12月21日 18時) (レス) id: 02fc9432b6 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - アッちょっとだれかタオルください目から汗が止まりません(*´;ェ;`*) (2019年7月29日 2時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
しゃーちゃん - ΩÅΩ;泣きそうだった (2019年6月19日 18時) (レス) id: 6e21cc5c2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 凄い良かった! (2018年1月28日 21時) (レス) id: dfa48f9dbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:尸 | 作成日時:2015年12月28日 11時