釣り合いたい【NJ】 (ページ29)

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本当は、手首の痣を知ったところですぐに何かあったのか内容を聞きたかったけど

NJ「んー、本当はすっごく聞きたいけど。Aさんが話してくれるまで俺は待とうかな」

って話してから、

この子は、強い目をしているけど
きっと怖いから、話を聞いてほしいから。

そんな言い方をしているのかな、と考えた。

NJ「でも、Aさんこそ、この痣はぶつけたんです。とかちょっと捻りました。とか、言い訳は沢山できたよね？

どうして、何も聞かないんですねって言うの？」

いじわるだと思ったけど、そう言ったら
Aさんの大きな目が見開かれてから、ふにゃりと三日月形になって

『やっぱり先生は、頭がいいですね』

その笑顔に、一瞬、時間を奪われてしまったかのように動けなかった。

すぐに鳴り響いた予鈴で、はっとしてからAさんを送り出した。

ああ、結局聞けなかった。

それだけが彼女が出て行ったドアを見つめて、その日は胸がつっかえていた。

NJ「どうしよう」

はあ、とため息ついてから、デスクの上にあったカップに残ったコーヒーをぐっと飲みほした。

とてつもなく、俺は君に、惹かれているのかも。