◆ ページ32
「え、えーっと、まぁ、うん」
こういう時どう答えたらいいんだろ…と脳内を駆け巡らせるが結局いい答えは見つからず言葉を濁して頷くと黒崎さんは不満げにえーっ、と声を零した。
「ほんっとうに!?全然そんな感じしないんやけど!?」
「い、いや、別に気に入らないわけじゃないの。ただ、ちょっと…」
その先の言葉が上手く言えなくて、ごにょごにょと答えると黒崎さんは私の横を通り過ぎ、スタスタとあのど広い窓へと足を進めた。
いきなりのことに戸惑っている私をよそに、黒崎さんは窓ガラスの両脇に束ねてあるカーテンの片方に手をかけ、カーテンを下ろした。
当たり前だが夜景がカーテンによって半分隠されて、何となく寂しいな、と感じている私に背を向けたまま「…俺な、」と黒崎さんは呟いた。
「Aが俺と結婚したら、Aもここに住むことになるやろ?やから、Aが住みやすい部屋にしたい。」
そしてもう片方のカーテンもするすると下ろした。
夜景が完全に隠れる。窓越しにこれでもかというぐらい映っていたビルも、そこから伺える街の活気や人々の気配のようなものでさえも一緒にカーテンの中に吸い込まれていった。
そして、まるでここが二人きりの世界だと、錯覚してしまいそうになる。
「…やから、この部屋はAが好きなようにして。色も、配置も、この家具が嫌なら別のにしていいから」
「…」
その言葉に何も反応できずただ彼の背中を漫然と見ていると、黒崎さんはゆっくりと私の方を振り返り、微笑みながら口を開いた。
「俺はAがいてくれればいいだけやから」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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