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彼の額に銃を向けたまま、そう言った。


仕事上、銃を使うことはあるが今日はそんな予定はなかった。理由は今日は潜入捜査であって、周囲から目立ってはいけないから。

だから、これはあくまで脅しに使うためのものだ。本当はここで撃つだなんて絶対に出来ないけど。でも、相手がこれを見て引いてくれるのなら、それでいい。


しかし彼は自分に銃を向けられているというのに、怯えている様子なんて少しも感じられない。



…それどころか、まるでこの状況を“楽しんでいる“かのように思えて、




「…いつから、俺に銃を向けるような悪い子になっちゃったん?A」

「は……?」


「話を逸らすな」とか「なんでそんなに余裕があるんだ」とか、そんなものがどうでもよく感じるぐらいに、彼の口から出た言葉は私を驚愕させるのに充分だった。



「なん、で、私の名前…」



この会場に入る時、私は偽名を使った。それなのに、今彼の口から出たのは確かに私の本名で。

一体、どういうことなの?どうして私の名前を知ってるの?


この人は、一体、何者?


彼は私を数秒見つめた後、目を細めた。
その表情は、どこか悲しげに見えた。


「…やっぱり、何も覚えてないんやね、A」

「覚えてないって…きゃ、」


その先の言葉は紡がれることはなかった。

あっさり私に近づいたかと思うと、銃を持った腕をぐい、と彼の方に引き寄せられたからだ。


…そして、一瞬のうちに、私は彼の腕の中にいた。抱きしめられている、と気づくのに数秒のタイムラグがあった。



カツン。
その拍子に、手から銃が離れ、床に落ちる。



「…え、」

「ふふ、久しぶりやね、A。ずぅーっと、会いたかった」


「たとえAが覚えてないとしても」そう耳元で話す彼の声は、最初の時よりも甘ったるく、私の脳をゆっくりと蝕んでいくように感じた。


片方の手は私の腰にきつく巻きついて、そしてもう片方の手は私の片手に絡めて、ぎゅっと握られた。


この男の警戒は恐らく解けている。今やろうと思えばここから反撃することだってできるのに、どうしてか、それができない。

ただ、彼にされるがままだ。


できるはずの抵抗ができない。



彼に絡められた手が、動かせない。

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時雨(プロフ) - なんさん» コメントありがとうございます!これからも何卒お付き合い頂けますと幸いです🙇‍♀️ (12月18日 10時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - 更新めちゃくちゃ嬉しいです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (12月17日 23時) (レス) @page48 id: 490d5409aa (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - FAMIRAさん» コメントありがとうございます!頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願い致します😭😭😭 (2022年10月31日 22時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
FAMIRA - すごく面白いです!(๑>◡<๑)更新、ファイト!です!٩( 'ω' )و (2022年9月8日 17時) (レス) @page40 id: 58cb53495b (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - Yuさん» コメントありがとうございます!わわわ丁寧に褒めて頂けて恐縮です泣 これからもお読みいただけますと幸いです…! (2021年10月22日 18時) (レス) @page23 id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時雨 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年9月4日 17時

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