シークレットラヴァーズ【X/Y/Z】

依存の矛先 ページ40

＿＿＿＿頭が、ぐらぐらする。

強い目眩に吐き気までもが襲ってきて、じわりと額に汗が滲むのが分かる。はぁ、はぁと短い呼吸を繰り返し、息苦しさを感じる中にふと脳裏に響いたのは耳障りな言葉達。




『何を休んでいる。この問いを終わらせるまでは休憩など許可した覚えは無い』



＿＿＿＿うるさい。僕はお前らの道具じゃない。




『音楽？くだらない。そんなものが一体なんの役に立つと言うんだ。』



＿＿＿＿やめろ、僕の好きな物を貶さないで。




『お前はただ、私達の言うことに従っていればいいんだ。お前のその能力はいずれ私達にとって大きな功績を…』
　


＿＿＿＿やめろやめろやめろ。僕はお前らのためなんかに生きたくない。僕は、僕は…




("あの人"がいなきゃ、僕は…)




「＿＿＿ふさん、…まふまふさん！」

「っ！？…え、あ…A？」



自分の名前を強く呼ぶ声に目が覚めると、焦りが滲んだAの顔が真っ先に目に入った。段々と意識が覚醒しそこでようやく気付く、僕はどうやら眠り込んでいたらしい。



「…あの、大丈夫、ですか？その、随分うなされていましたけど…… 」



恐る恐るといった様子で、そうAが聞いてくる。心配してくれてるのかな、誘拐犯の立場でもあるこの僕のことを。



「あ〜、ちょっと嫌な夢見ちゃっただけ。大丈夫だよ、ありがとう」

「そうですか、それなら……いや、なんでもないです」



何か言いかけるかすぐにその口は閉ざしてしまう。けれど彼女が何を言おうとしたのか大体分かる。大方『それならよかったです』のような類だろう。言おうとしたのはいいものの誘拐犯にそんなことを言うのも変だと思ったんだろうな。それなら心配することすら変だと思うんだけど。

Aの持つこの優しさが、正直僕にはよく分からない。

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