シークレットラヴァーズ【X/Y/Z】

◆ ページ39

それを聞いたまふは目を見開いた後、瞳をゆらゆらと揺らがせながら苦笑する。少し困っているような、けれどどこか嬉しさも混じっているような表情だった。



「ご飯、か…正直あんまりお腹減らないんだけど、でも、そらるさんが言うなら、少しは食べなきゃ、だよね」



同意を求めているようで独り言に近いまふの言葉に俺は「…うん、その方がいいと思う」とだけ返した。

それから腰を上げて自分が座っていたところのシーツのシワを軽く手で伸ばした後、Aに視線を向ける。相変わらず穏やかな表情で眠る彼女にくすりと微笑んだ。それから大きく屈んで顔を近付ける。



「じゃあねぇA、今度は起きてる時に会おうね」



片手で前髪をかきあげると、姿を見せたおでこに優しい口付けを落とす。サラサラとした触り心地の良い黒髪。ふわりと鼻を掠める柔軟剤の自然な香り。…Aの持つ全てが、俺を狂わせていく。あぁもう攫っちゃいたい。いやもう攫っちゃってるんやけど。

　

(…根はすごく優しい子、か)

　

Aの寝顔を見ていたら先程のまふの言葉を思い出した。住む世界が変わって暮らし方や価値観などが大きく変わっても尚、その根底に沈むAの本質だけは何一つ変わっていないことに更に愛おしさが増す。

次その目が開かれる時は、どうか俺だけを映していますように。



(…そうじゃなきゃ、許さない。)



　

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