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「いや誰も欲しくねぇって!考えれば分かんだろフツーに…ん?」
ぶつくさと文句を飛ばしていたなるせさんと不意に視線が交わる。条件反射で肩を少し揺らせてしまうと彼は何か面白いものを見つけたようにニヤ、と妖しげな笑みを浮かべた。
「はは、なに、怖いなって思った?今の俺らの話聞いて」
ギラついた彼の双眸に私が映る。その瞳に一体どれだけの血を映してきたことだろう。先程の常人ならすっかり顔を青ざめてしまうような話の内容も彼は一切顔色を変えることなく「どうでもいい」の一言で片付けていた。
あらきさんもそうだ。なるせさんと比べると一見温厚そうに見えるが「骨折るだけでいい」だなんて台詞、普通の人の口から出るわけがない。
結局のところ、どれだけ親しげな雰囲気を纏っていたとしても彼らが普通の人にはない残虐性を持っていることに変わりはないのだ。例えば普通の仕事をして普通に生きている人が生活する中で「殺す」か「殺さない」かの選択肢など持つはずがないように。
何故ならあまりにも自身の生活と関係が無さすぎるから。けど彼らは違う。
騙し騙され、そして殺し殺されが当たり前の世界。彼らの人間離れした美しさのその裏には大量の血が流れている。なるせさんもあらきさんも、一体何度その透き通ってしまいそうなほど白く綺麗な手でどれだけの人の命を絶たせたことだろう。
彼らは平凡な生活を送っている者にとっては『異常』であり、…そして
「いえ、別に。『そういうこと』はよくあるので」
表情を変えることなくそう返した。こういった職業をしていると当然恨みも買われる。彼の話に出ていた『めいちゃん』のように突然襲われるだなんてことも何も珍しい話ではない。
実際私もそういう場面に出くわしたことなど沢山あるし、その度にセンラさんに鍛えてもらった武術でいなしていた。…流石に指は切断しなかったけど。
私の返答になるせさんは何とも言えない表情を浮かべて口元から笑みを消した。
「…ま、そりゃそっか。アンタも俺らと同じマフィアだもんね」
同じ、
どうしてか、ぽつりぽつりと零した独り言のようなその言葉はまるで自分自身に言い聞かせているように感じた。逸らされた目線が何を物語っているのか、私には知る由もない。
「…」
そんななるせさんの様子を、あらきさんは何か言いたげな瞳で見つめていた。
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時雨(プロフ) - なんさん» コメントありがとうございます!これからも何卒お付き合い頂けますと幸いです🙇♀️ (12月18日 10時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - 更新めちゃくちゃ嬉しいです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (12月17日 23時) (レス) @page48 id: 490d5409aa (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - FAMIRAさん» コメントありがとうございます!頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願い致します😭😭😭 (2022年10月31日 22時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
FAMIRA - すごく面白いです!(๑>◡<๑)更新、ファイト!です!٩( 'ω' )و (2022年9月8日 17時) (レス) @page40 id: 58cb53495b (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - Yuさん» コメントありがとうございます!わわわ丁寧に褒めて頂けて恐縮です泣 これからもお読みいただけますと幸いです…! (2021年10月22日 18時) (レス) @page23 id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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