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二人からの言葉にまふまふさんは「ん〜〜」と唸った後、「…まぁ、確かに。」と言うとポケットから鍵を一つ取り出した。
「普通に怪我とかしたくないから僕のこと襲わないでね。僕君よりずっと弱いんだから。」
ガシャン、と音をたてると手錠が外れ、一気に手首が開放感に包まれた。
「よかったね〜外してもらえて。色々楽になんじゃん。」
「…。」
私の手首を見ながらなるせさんがそう言う。
手錠の重みがなくなったおかげで随分と手首が軽くなったように思える。
あらきさんやなるせさんが言った通り、仮にまふまふさんは何とかできたとしても、この二人が相手となれば話は別だ。
彼らの実力が私よりも圧倒的に高いということは昨日の件でよく分かっている。だから私も今更手錠を外されたところで抵抗するという気にはならなかった。
彼らもそれを分かっていたからこうしてまふまふさんを説得したのだろうけど、だとしても、どうしてそこまでしてくれるのか分からない。
あんな誘拐も同然の、というか完全に誘拐してきた割に彼らは随分と私に対して友好的だ。
3人共わざわざ自己紹介をしてきたし、私の前で平気で他の構成員の名前も出す。
それに、まふまふさんは先程私に大人しくしてくれるのなら手錠を外すと言った。私が嘘をつく可能性だってありうるのに。私がここから逃げる可能性は考えているのに。
まるで、私のことを信用しようとしているみたい。
あらきさんもなるせさんも、私に親しみを持つように接してくる。
それなのに、決して私を逃がそうとしない。
二人が手錠を外してもいいんじゃないかと提案したのは私が絶対に逃げられない状況にあるからと確信したから。まふまふさんが外してくれたのも結局その理由に納得したからだ。
少なくとも今の彼らに敵意は感じられない。けれど私をここから解放する様子も一切感じられなかった。
どうして私をそこまでして此処に留めたがるのか、全く分からなかった。
「あ、そうだ。さっきまふさんにお粥持ってってもらったんだけど食べた?あれ俺が作ったんすけど。」
「え…。」
考えに浸っているとあらきさんにそう言われる。あのお粥は彼が作ったということに少なからず驚いた。失礼かもしれないが彼の派手な見た目からは料理をするイメージなど皆無に近かったから。
「あらきはねーほんとに料理ができんの。いっつも俺らのご飯も作ってくれてるし。」
どこか自慢げになるせさんが話す。
(本当に、分からない。)
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時雨(プロフ) - なんさん» コメントありがとうございます!これからも何卒お付き合い頂けますと幸いです🙇♀️ (12月18日 10時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - 更新めちゃくちゃ嬉しいです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (12月17日 23時) (レス) @page48 id: 490d5409aa (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - FAMIRAさん» コメントありがとうございます!頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願い致します😭😭😭 (2022年10月31日 22時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
FAMIRA - すごく面白いです!(๑>◡<๑)更新、ファイト!です!٩( 'ω' )و (2022年9月8日 17時) (レス) @page40 id: 58cb53495b (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - Yuさん» コメントありがとうございます!わわわ丁寧に褒めて頂けて恐縮です泣 これからもお読みいただけますと幸いです…! (2021年10月22日 18時) (レス) @page23 id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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