シークレットラヴァーズ【X/Y/Z】

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(…にしても、広いな)


相変わらず眩しい場内を怪しまれない程度にぐるりと見渡して、そう思った。


会場は広い上に、人がとにかく多い。この中から怪しい人を探せ、だなんて言われても無理に決まっている。


(この会場の中で取引はまずないだろうな)


“怪しい“と言われているぐらいだから会場の中で堂々と取引をするだなんてことはまず有り得ないだろう。そもそも、パーティで取引をすること自体非常識なのだから。


となると、取引現場はこの会場以外となる。…が、こちらも潜入で来ているためあまり目立つような真似はできないし、なにより、この建物自体とてつもなく大きいのだ、ここ以外の部屋なんて幾つもあるし、それを言ってしまえばキリがない。


「…」


事前に記憶しておいたこの建物の内部構造、そして現時点での状況を頭の中で整理し、解決策を練る。


(出入口付近にいるのが最善かな)


今確実に分かっていること、それは連中が“このパーティに正式に参加している“ということだ。


これだけの人数だ、金持ちのフリをしてこの建物に忍び込むのは簡単だ、私のように。
しかしそれだとわざわざ危険を冒してまで場所をここに指定する理由がない。


今日ここで取引をするということは、このパーティに正式に参加している人以外、ありえないのだ。


そう考えると、連中は必ず一度はこの会場に足を運ぶ。つまり、出入口を必ず通るということだから、私はそこを見張っていればいい。


私は怪しまれないために近くに置かれたワイングラスを手に取ると、出入口がよく見える壁の前に立って、一口、飲むふりをした。

実際には飲んでいないが、周りからは飲んでいるように見えるはず。昔センラさんから教わったやり方だ。


手首に付けてある腕時計を見た。

このパーティの主催者である一ノ瀬会長の挨拶が行われるのが約30分後。挨拶中に会場を出入りするのは失礼に値するから、その線はないとみていいだろう。

とすると、連中が会場を出入りするのはその前か後かの二択になるが、後になると会長挨拶が終わったからと、気楽に会場を出る人が多くなる。奴らが誰の目にも触れたくないのなら、まだ挨拶が始まっていない、


(今、か)


私は周囲に気付かれないように目線を出入口に向けた。奴らが出入りする可能性が一番高いのは今だ。

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