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(…あれ、でも)


さっき電話で聞こえた声は、男の声だった。まだ他に人がいるということ?

と、その時、女は口を開いて「あんたがA?」と電話の男と全く同じ声で(・・・・・・・・・・)問いかけてきた。


(この人、男!?)


「…そうですけど、我々になにか用ですか。こんな、被害を出すほどの」


動揺を悟られないように、彼女を、いや彼を睨みつけながらそう言うと、彼は何故か楽しそうに口元を歪めた。


「いや、俺が用があるのはこのファミリーじゃない。…あんただよ、A」

「…」


やはり彼の目的は私か。
電話で私の本名を知っていたという時点で、もしかしたらとは思っていた。それに気付かないふりをしていたけど…。


男は余裕ぶった笑みを崩すことなく、こちらへ手を伸ばした。


「…俺達と来てもらおうか」

「っ!?」


その瞬間だった。

今まで何の気配も感じられなかった背後から、急に人の気配を感じ、勢いよく振り向いた瞬間、ドンっと首元に、強い衝撃が走った。


「…う、あ…」


視界がぼやけ、意識が遠のいていく。

視界がぐらりと傾いたその時、後ろから誰かに支えられたような、人の温もりを感じながら私は意識を手放した。





「はい、任務完了。やったね、あらき」


うぇーいと本当に喜んでいるのかどうか謎な棒読みで目の前の女か男かよく分からない奴はそう言った。


「…そっすね」

「え、なに、対して嬉しくない感じ?まぁ今回の任務は雑魚の相手ばっかだったしつまらなかった?」

「いや、そういうのじゃないけど、」


気を失った彼女を運びやすいように横抱きにする。前から「うわあらき王子様じゃーん」だなんて声が聞こえるが無視した。


見やすくなった彼女の顔を覗き込む。それは言ってしまえばどこにでもいる普通の女の寝顔で。
服越しに触れる身体付きも、筋肉がついていなくて、細くて、柔らかい。裏社会の住人とは思えないぐらい、その女は普通だった。


「…こんな、華奢な女の子も“こっち側“なんだなって」

「…」


目の前の男…なるせが珍しく何も言わないで黙りこくっているので俺は場の空気を変えるように口角をあげて口を開いた。


「ほーら、早くしないと他の奴らが来るよなるせ、早く行こう」

「…そーだね、」


そう言うと、予め確保していた逃走ルートへとお互いに走り始めた。


最後にチラリと、何人もの構成員が転がっている方へと視線を向ける。


(…悪いけど、)


思わず口元が歪んだ。




…君達のオヒメサマ、俺達が連れ去っちゃうね?

盲目的愛→←◆



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時雨(プロフ) - なんさん» コメントありがとうございます!これからも何卒お付き合い頂けますと幸いです🙇‍♀️ (12月18日 10時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - 更新めちゃくちゃ嬉しいです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (12月17日 23時) (レス) @page48 id: 490d5409aa (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - FAMIRAさん» コメントありがとうございます!頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願い致します😭😭😭 (2022年10月31日 22時) (レス) id: b85bf6c9d0 (このIDを非表示/違反報告)
FAMIRA - すごく面白いです!(๑>◡<๑)更新、ファイト!です!٩( 'ω' )و (2022年9月8日 17時) (レス) @page40 id: 58cb53495b (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - Yuさん» コメントありがとうございます!わわわ丁寧に褒めて頂けて恐縮です泣 これからもお読みいただけますと幸いです…! (2021年10月22日 18時) (レス) @page23 id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時雨 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年9月4日 17時

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