ニートが9匹 ページ10
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唇ゲルゲさんこと中間淳太さんがシゲの家にやってきて、
もうすぐで一時間という時間が経とうとしている。
シゲはお酒に弱いらしく、さっきから眠たそうにしている。
一方、中間さんはお酒に強いらしく、平然とビール缶を開けている。
そのうちにシゲは睡魔に負け、机に突っ伏して寝てしまった。
いや寝らんといてや。この状況気まずいねんけど。
何で私、シゲの上司と二人っきりで起きとかなあかんねん。
もういっそのこと私も寝ようかな、と考え始める。
「なあ、Aさん」
「あ、はい。何でしょう」
「Aさん、重岡が彼氏でよかったな。ほんまに」
そうや。中間さんまだ勘違いしたまんまやった。
違うぞと否定しようとしたが、先に中間さんが口を開いてしまった。
「今日の朝な、重岡が急に言ってきてん。
『唇ゲルゲさん!俺今めっちゃ幸せっすわ!』つって」
いやあんた会社内でも唇ゲルゲって呼ばれてん?
「ほんで、何があったんって聞いたんよな。
そしたらあいつ、めっちゃ幸せそうな顔で
『天使ちゃんが家に来たんすわ』って言ってんねんで?」
シゲが会社で私のことをそんな風に言っているとは。
身体中の熱が顔に集中していくのがわかる。
「重岡っていっつも明るいように見えるけど、
実は繊細なとこもあんねん。
やから、重岡のことよろしくな?」
「あ……はい」
「じゃ、重岡は寝てもうたし、俺も帰るわ。
重岡が起きたら明日遅刻せんように言うとってな」
「わかりました。伝えときます」
「ほな、お邪魔しました」
バタン、と玄関のドアが閉まったと同時に、
さっきまで眠りこけていたシゲが身体をゆっくり起こした。
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作者名:も。 | 作成日時:2019年10月21日 0時