守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ39)

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第37話【12章:決して消えない絆】ページ39

目を覚ませば、見慣れた天井が目に映る。

何度か瞬きをし、現状を理解しようと試みる。
覚えているのは自分の名を必死に呼ぶゼノの顔。
そうか、確か戦場で……
リシスは自分がなぜここにいるのかを理解した。

全く、自分から戦場に赴くと言っておいて無様なものだ。
思わず額を抑え、ため息をついた。

その時、戸が開いて青龍を除く龍たちが入ってくる。

「目が覚めたか」

「……悪い、心配かけたな。いろいろと」

「もう平気なのか？」

「あぁ…大分良くなったし、気持ちの整理もついたよ。
さすがにあれだけ泣けば涙も枯れた」

悲しみが消えたわけではない。
しかし、何度も泣いて…ようやく緋龍王の死を受け入れられたような気がした。

その悲しみが、自分のものなのか龍の血によるものなのかは未だに分からなかったが。

「怪我の方は？」

「怪我？」

怪我なんてしたか？リシスは首を傾げる。
そして自身の体を見ると…そこには、あちこちに包帯やら何やらと手当てされた跡があった。

そういえば敵に斬られたか。
破壊龍の力を使いすぎたせいなのか何なのかは分からないが、前後の記憶が曖昧だ。

「こんな怪我、かすり傷だろ」

「違ぇだろ」

「いつものお前らよりは何倍もマシだよ」

リシスはこれまで幾度となく傷だらけの彼らを治してきた。
それを思えば、此度のリシスの怪我などかすり傷といっても過言ではないのかもしれない。

しかし、それを四龍たちが納得するかは別の話だが。

ほぅ、と光が灯りリシスを包む。
そしてそれが収束した後に包帯を解けば、もう傷は見えなかった。

「ところでアビは？」

ふと、尋ねる。
その瞬間…場は重苦しい雰囲気に包まれた。

「……青龍は、緋龍王の廟に入り浸ってるよ」

そこでハッとする。

そういえばアビは攫われたのだったと。
無事であることには安心するが、アビもまた自分と同じように悲しみを抱えていると思うと……胸が締め付けられる思いだった。

「私、アビと少し話してくる」

「今は……」

「今だからこそ、行かなきゃなんねぇんだ」

同じく自分の龍の力に苦しんでいる今だからこそ、行かなければならない。
仲間たちが自分にしてくれたのと同じように……呼びかけ、寄り添わなければならない。
それが出来るのは……同じ苦しみを知る自分だけなのだから。

リシスは下されていた銀髪を括り、身なりを軽く整えると、部屋に3人を残して緋龍王の廟へと向かった。