傷弾の鳥【出水公平】 (ページ3)

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2話ページ3

Aside

その後の記憶も今となってふわふわとしか思い出せない。

確実に言えるのは、亡くなると思われた命は1人の少年によって救われた。

彼が手を引っ張って私を助けた後、青色のジャージを着た高校生らしき男性が目の前の化け物を切って助けてくれた。

お礼を言う前に彼は去ってしまったので、名前は聞けなかったが「いずれ会うことになる」と確信を持って私達に告げた。

どうしてそんなに断言できるのかは不思議だったが、今は信じられないような現実と《自分達が助かった》という事実を受けいれるだけで手一杯だった。

「なんだったんだ、あの人....というかあのバケモンは一体....」

『どうして戻ってきたの、“出水くん”』

私は理解できなかった。

もし私が出水くんの立場なら間違いなく彼を置いていっただろう。

親友でも友人でもない、ただのクラスメイト。

そんな人を1人置き去りにしたからといって、この状況じゃ誰も責めない。

「なんでって言われても...危なかったから...？」

思わず口が開いた。どんだけ呑気なんだと少し失礼なことを考えたが、助けに来てくれた人がいたという事実を嬉しく思わないほど、私の人間性は乏しくない。

『ありがとう、助けてくれて。嬉しかった。』

そういうと彼は照れくさそうに

「なんもしてねーよ。」

と頭を掻きながら答えた。

「それより、ほら足怪我してんだろ。俺がおぶるから避難所まで行くぞ。」

『えっ。』

仮にも中学生、しかも男女。

それなりのお年頃で体重が重たいんじゃないかと年相応のことを考えてしまう。

でも、いつ化け物が来るか分からない以上、そんなことよりも生命の危機を案ずるのは当たり前だった。

『お、お願いします...。』

そう言って私は彼の背中にくっついた。
くっついた場所からは彼の体温がじんわり広がり、生きていることを実感する。

おぶってる間に出水くんは、さっきの人かっこよかったなーとか、俺もあんな風に戦いてーとか独り言を漏らしていた。

改めて呑気な人だなって思った。けど、この悲惨な現実の中でそう思わしてくれる出水くんがヒーローのようにも感じた。

『出水くんってまるでヒーローみたいだね。』

「なんだそれ。お前って変わってんな！」

『人のこと言えないからね。』

崩れた「日常」の中で2人の笑い声が響いた。

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修正しました。