3話 ページ4
出水side
依田をおぶって避難所まで移動した。
周りの男子からは、お前はんぱねーな!やるじゃん!と讃える声が挙げられる。
依田も依田で、クラスメイトの女子から大丈夫?怪我痛くない?と囲まれて少し困り顔をしながら対応をしていた。
大丈夫だよと先生や同級生に伝えてる顔は至って普通だったが、死にかけるという出来事の後に《いつも通り》の顔ができるアイツに違和感を抱いた。
怖かったと泣きついてるほうが正常なくらいだ。
それを言ったら、助けに行った俺も俺かと自嘲気味の笑みを浮かべた。
...
後に第一次大規模侵攻と呼ばれる出来事が起こって1週間。
俺達は避難所で生活していた。
人間とはいつのまにか非日常を日常に変えられる生物らしい。
〜さんが亡くなったらしいとか、〜の娘さんが行方不明だとかそんな話が頻繁に流れるようになった。
ニュースでも連日大規模侵攻に関することしかやってなくて、今更誰かが亡くなったと聞いても大して焦ったりする人は少なくなっていった。
それでも家族の安否を聞いたときはホッとしたことを覚えている。俺の両親は奇跡的に無事で、家も全然崩落しなかったらしい。
安心したのも束の間、同級生の間でこんな噂が流れていた。
《依田のお父さんとお母さんがが死んだ》
あくまでも噂だった。
その噂が真実かどうかを知る者はいない。こんな事態になっても、身近な人の死について簡単に聞いていいことではないと分かっていた。
その噂も月日が経つにつれて、聞こえなくなった。
...
避難所で生活をしてしばらく経った頃。
俺はふと目が覚めた。
暗い中、目を凝らすと4時10分という文字が見えた。
なんだか二度寝する気分にもならなくて、周りの人を起こさないように忍び足で布団の合間を縫って外に出た。
外に出ると朝特有の寒さで鳥肌が少しばかり立ったが、誰も起きていないという背徳感でワクワクもしていた。
腕を思い切り上に挙げて、ん〜!と伸びているところに背中から突かれるような感覚がした。
どうやら、犯人は俺が助けた人らしい。
『朝はやいね、出水くん。』
「俺は偶然起きただけ。お前こそはやいな、依田」
そういうと私も偶々だよとあいつは返した。
『そうだ出水くん、早起き者同士少し散歩しない?』
特に断る理由も無かったので、俺は縦に首を振った。
まるで決まった場所に誘われるように...俺たちは薄暗い道を歩いた。
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作者名:いーす | 作成日時:2019年4月30日 17時