【夢短編集⑤】 (ページ8)

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tn…二人の証明(2) ページ8

トントンに会ったのが式の２日前。
現実を受け止めきれず、思わず彼の家を訪れて泣きついてしまった。
私達の関係にちゃんとした名前はなかったけれど、きっと私と彼は同じ気持ちなんだとずっと思っていた。

目を閉じればふと笑みが溢れる、彼との楽しい時間。
彼といると、春の日にお散歩してるみたいな、ぽかぽかした気持ちになる。

「…トントン」

着替えを終えた自分の姿を鏡で見る。
ぽろり、一筋の涙が頬を伝う。

「…っ、トントンに選んでほしかったな」

気分が悪いから時間まで一人にしてほしいと頼んだ控室、周りの世界から隔絶されているような気がして不安になる。
小さな箱の中で育った私に、トントンはたくさんの楽しみを教えてくれた。

「…会いたい」

決められていた事、けれど新しく望んでしまった事。
知ってしまった、本当の幸せ。
お互いに、それは間違いだと知っていた、だから関係を明確にしなかった。
だけど……。

「非常識なんは分かってます、非難されるんは百も承知で来ました。せやけど、大切な二人の娘さんのために俺の話も聞いて下さい」

……だけど。

「まだまだ未熟な自分です、これだけは言わせて下さい。この結婚式、中止して下さい」

大好きな人と、ずっと一緒にいたいと初めて願ったの。

「Aさんの話を聞いてやって下さい、Aさんの願いを、どうかあの子をあんな良い子に育てたお二人が聞いてあげて下さい!!」

自分は間違った事をしてるんじゃないかと怖かった。
だから言われた通りの世界に閉じこもっていた。

「一生かけてこの間違いを正しいって証明してみせますんで!!」

一人になりたくなかったから。
だけど、一人じゃないって大好きな人が教えてくれた。

扉を開けて廊下に出る。
驚いた顔の両親に、頭を下げ続けるトントン。

私に気づいたトントンが、ぐしゃぐしゃな顔で泣きながら、転びそうな勢いで飛び出してきた私を抱き留めてくれた。

「トントンっ!」

「遅なった、二人でお願いしよ」

「うんっ」

あの日、交わした約束。
"迎えに行くから待っていて"。

あの日、私が閉じこもっていた世界の扉を開けてくれたのはトントンだ。
だから、今度は私が自分から扉を開けて出て行く番。

「「お願いします!!」」

もう一人じゃない、彼がそばにいる。
二人で手を繋いで、間違いだと知りながら、二人で一つの正しいを証明する。

「「私(僕)たちの話を聞いて下さい!!」」

どんな困難も、二人でなら乗り越えていけるから。