【夢短編集⑤】 (ページ6)

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ht…最後の誓い(2) ページ6

「新郎、＊＊…貴方は…」

厳かに執り行われる神聖な式、夜空を切り取ったステンドグラスはキラキラと輝いていて、不思議な感覚にさせる。
右手は感覚がない、温もりを感じない、横目で見ると知らない誰か。

「新婦、A。貴方は…」

新婦、そっか。自分の結婚式なんだ。
心がここにない、どこに置いてきたんだっけ、どうして私はこの人の隣に立っていてるのだろう。
ぼんやりとした頭で、誰かの声を聞く。

「……帰れ!!」

やっぱり、あの人は来なかった。
最後だと、自分から切り離したのに、今更彼を求めて。

「……ちゃん!!…Aちゃん!!」

「……ぇ」

遠く彼方にあった意識が、彼の声で呼び戻される。
信じられない、まさかそんな筈は、幻聴だったらと振り返るのが怖い。

「こんな式、やらなくていいんだよ!Aちゃん!!」

「…っ、ひと、らん?」

おずおずと振り返れば、もう目の前に彼が立っていた。
肩で息をして、服が乱れている。

「どうして、何でいるの…」

「呼んだでしょ、俺を。昨日メールで呼んだでしょ!!」

━━ ひとらん……会いたいよ ━━

溢れる涙が止まらない。
ひとらんが、新郎や両親によって祭壇から引き摺り下ろされそうになる。

「最後にしちゃ駄目だよ!!」

嗚咽が漏れて、思うように言葉が出ない。

「最後にしたくないなら言わなきゃ駄目だよ!!」

あれが"最後"だと言い聞かせて、"最後"に振り絞った一欠片の願い。

「Aちゃんが最後まで一緒にいたいのは誰?!」

始まった時から最後を誓った。

━━ 最後まで、ひとらんといたい ━━

「私はっ!!」

しんと静まり返る教会の中、その場に崩れ落ちてしまいそうな私を母が支える。

「…っ、お母さん。私はっ…ひとらんと、いたいの」

駆け寄る父に、縋るように手を借りる。

「お父さん…お願いっ、します……私は、彼と…一緒にいたい」

二人の手を離れて、私はあの日のようにひとらんの胸に飛び込む。

あなたの手は、あの日と同じように温かくて、冷たく凍った私の心を溶かしていく。
許されないと知りながら、最後の日までと覚悟を決めて、一歩進めた足取りは止まる事を知らず。

「ひとらんといたい」

「だったら一緒に居よう。俺が一緒にいるから、何とかしようよ」

最後までと誓って、2人で覚悟して歩みを進めた。
最後を知りながら誓ったあの日と同じように、最後の日に始まりを誓う。

「Aちゃんと最後まで一緒にいるよ」

「私も、最後の最後までひとらんといる」