【夢短編集⑤】 (ページ36)

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ci…after story × Valentine ページ36

「あら、寝ちゃったか」

今日はドレス選び3回目の日、私は先に式場に着いていて、チーノは仕事終わりに直接駆けつけてくれた。
けど、私が着替えてる間に眠ってしまったらしい。

「おーい、チーノ!」

「……ん」

膝を揺すって起こすと、半開きだった口が閉じて、代わりに薄く目が開く。

「お疲れ様、チーノ」

「あ、お疲れ……A、かわええやん」

ふにゃっとした、鼻にかかる甘い声。
仕事で疲れてるんだろう、余程眠いらしくまだうつらうつらしている。

「寝てても良いよ?終わったら起こすから」

「ん～、あかん。俺も選ぶよ」

そう言って、両手を前に出すチーノ。
引っ張って起こして、のポーズ。
ドレスを着ているので、スタッフさんが転ばないようにと気を遣ってくれる。

「てかあかんやん、何で赤着てんの?」

「え、可愛かったんだもん」

「おい、そこはオレンジやろ」

「また!そんな色の拘りを出す～!」

「色は重要やねんで?ええか、Aに似合うのは俺の色やねん」

「オレンジって言ってよ、恥ずかしいなぁ」

だけど、そんな風に思ってくれている事が嬉しくて、そしてそんな事を恥ずかしげもなく言ってくれるところが好きだ。

「で、どうですか?オレンジを着た印象は」

少し仰々しく両手を広げて、チーノが選んだドレスを着た姿を見せてみる。

「ん～、やっぱさすが俺やな。うん。Aにはオレンジがよお似合う!」

腕を組んで、満足そうに頷くチーノを見て、スタッフさんも微笑ましそうに見ている。
なんだかそれが恥ずかしくなってきて。

「もういい?脱ぐよ!」

「え、待ってよ!!あ、スマホ!あれ?俺スマホどこやったっけ」

「スーツのポケット」

「よお知ってるな、さすがお嫁さん」

「ーっ!!もう、撮るなら早くしてっ」

不意に言われた嬉しい言葉に声が上ずってしまう。
スタッフさんは、せっかくだからとツーショットまで撮ってくれた。

…◆…

「疲れてるとこごめんね?ありがとう」

「ごめんねは要らんよ、俺が来たかったんやし」

「…うん」

すっかり暗くなってしまった夜道を、二人で手を繋いで歩く。

「夕飯、外で食うて帰ろか」

「そうだね……ん?……あ!!」

「何?どうしたん?」

「チョコ!!あー!!バレンタインなのにチョコ忘れてきたー!!」

「ふははっ、じゃあ代わりにAでええよ」

「なっ、わ…取り帰る!!」

「何でや!!ええやん!!」

「よくないのー!!」

こうやって二人で笑って過ごせる事が、本当に幸せだと思う。