【夢短編集⑤】 (ページ33)

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zm…after story × Valentine ページ33

「A、疲れてへん?大丈夫?」

「ありがとう、大丈夫だよ」

今日はお休みの日に、ゾムと丸一日かけてブライダルフェアを２件回る予定だ。
今は１件目を終えて、次の敷地へ向かう途中。

「あっこのご飯、美味しかったなぁ!」

「そうだね、お肉が柔らかくて美味しかったね」

１件目は式場の案内、テーブルコーディネートや会場の飾り付けを見せてもらい、お昼にフルコースを頂いた。

「今からはドレスの試着とご飯やったっけ」

「うん、そう」

そして２件目は試着と夕方にフルコース。
なるべく抑えて食べるつもりが、美味しそうに食べるゾムにつられて完食してしまった。

式場に着いてドレスを選ぶ間も、どこか胸の辺りがもやもやする。

「…A、やっぱ疲れてんちゃう?大丈夫なん?」

「大丈夫、ありがとう」

ゾムはずっと心配そうで、だけどせっかく楽しみにしていたドレスだから絶対に着たい!!
胸焼けを堪えつつ、ゾムと二人で話しながら選んでいく。

「この緑ええな、明るい色で。Aにも似合うし、俺の色やんなっ」

嬉しそうに微笑むゾムが可愛くて、もやもやも忘れて試着する。
が、コルセットの締め付け方が思いの外きつくて。

「…あかん、A早よ脱ぎ」

「え、どうして?似合わない?」

「ちゃう、似合うけど。すいません、脱がしてやってもろてええですか?」

ゾムが私の代わりにスタッフさんに謝ってくれる。
せっかくのドレスなのに、どちらにも申し訳ない。

「ご飯も、無理せんでええから食べれるのだけ食べたらええよ。俺が食うたるから」

「でも…」

「A、今日は俺の言う事聞き?」

「…はい」

珍しくゾムに諭されて、私は泣くのを堪えて食べれる量だけ頂いた。

…◆…

「もう、泣かんでええやん」

「だってぇ…」

帰ってからと言うと、私はすぐにゾムに抱きついて泣いた。
楽しみにしていた試着も、フルコースも、せっかくのゾムとの式場巡りの楽しみを台無しにしてしまった。

「あんな?そんな急がんでもええんやで?」

「うぅ…」

「ゆっくり選んだらいいやん、大切な事なんやから」

「…うん」

「ほら、もう泣かんと。それよりも今日は大切なことがあるんちゃう?」

そうだった、式場の事で頭がいっぱいで渡すのを忘れていた。

「バレンタイン…」

「ふふふっ、何作ってくれたん?」

「シュークリーム…」

「嬉しいなぁ、でも今はこっちがええな」

そう言って、優しく私にキスをするゾム。

「もっとちょうだい、A」