【夢短編集⑤】 (ページ28)

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tn…after story × Valentine ページ28

「あ～、あかん。恥ずい」

「フェアだから!ね、お願い～」

「何でそんなおねだり上手なん?いや行くけどさ、行くけどやっぱ恥ずかしいなぁ」

とか言いながらブライダルフェアに連れてってくれるトントン、大好きっ。
あんなに憂鬱に感じたあの日々と違って、本当に好きな人との準備はこんなに楽しいんだなぁ。

「なんや、ニコニコして」

「嬉しいんだもんっ」

「そか、Aが嬉しいなら俺も嬉しいわ」

そう言って運転しながら私の頭を撫でるトントン。
あぁ、ぎゅってしたい。

「トントン、決まった?」

「ん～…いや、こっちも…ん～」

フェアが行われている式場に着いて、まずしたのはドレス選び。
体験なので1着しか着れないから、トントンに選んでもらうことにしたら、思いの外悩みまくっている。

「これ派手すぎんのか?いや、Aには似合うのか?いやでも俺は向こうのが」

トントンにぴったりくっ付いてドレス選びを観察する。
無意識なのか、手に取るものはどれも赤で。

「そんなに赤が良い?」

「赤が似合うよ、Aは」

「…すき」

「えっ!?何や急に!!てかもう決まらんわ、Aが着たいのはどれなん?」

「私?これっ」

それはトントンが一目散に一番最初に選んだ赤いドレス。
知ってるよ、ずっとこれ気になってるでしょ。
このドレスの近くを行ったり来たり。

「ほんまにそれなん?」

「うんっ、だってトントンが選んだドレスだもん」

私は意気揚々とスタッフさんに連れられて試着室に入る。
外からは可愛いですねとか言われて困ってるトントンの声が聞こえて、思わず笑ってしまった。

…◆…

最後はディナーとデザートの試食。
ドレス選びも楽しみだったけど、二人にとってはこれが楽しみだった。
少し豪華な食事を夜景を見つつ楽しんで、最後は美味しいデザート。

「見て、トントン」

「んー?」

「ハッピーバレンタインだ!!」

「ほんまや!!」

見れば、デザートプレートにはチョコレートソースで書かれたハッピーバレンタインの文字。
あんまりの忙しさについ忘れそうになっていた。

暖かい照明の中、自分でも用意していた手作りのチョコが入った箱を、トントンに手渡す。

「いつもありがとう、トントン」

少し気恥ずかしい、いつも言えない感謝の気持ち。
箱を受け取る際に、私の手をトントンが優しく握って見つめてくる。

「これからもよろしくな、A」

不意の未来を約束するような言葉に胸がキュンとする。

「早よ帰ろうな」

「うんっ」