sha…夢うつつ(2) ページ14
現実は甘くなくて、お伽話のようなハッピーエンドを迎えない事は分かりきっていた。
なのにどこかで、私を助け出してくれる王子様みたいな人を待ち望んだ。
そんな時に彼と出会って、いけないと知りながら関係を続けて、想いは日毎強くなった。
「…助けて」
まるで夢に見たお伽話のお姫様みたいな格好をして、凡そ幸せそうには見えない泣きはらした顔の私が鏡の中にいる。
小さく呟いて、もう二度とあの日には戻れないんだと、教会に引きずり込まれる。
…◆…
母にベールを下ろされて、震える手で父の腕に手を通す。
溢れた涙は止まる事を知らず、親族の小さな囁き声が聞こえる。
「…A」
歩かなきゃ、足を動かさなきゃ。前へ、進むしかないのに。
「…A!」
父が、母が、無理矢理背中を押す。
だけど私の足は、まるでその場に縫い止められたように動かない。
「…やだ」
「A!!」
突然の父の大声に音楽が鳴り止み、ざわめきが止まる。
父が手を振り上げた瞬間、私は目を閉じる。
しかし、いくら待っても頰に衝撃はこなくて、代わりに優しく肩を抱かれた。
「嫌や言うてるやろ!」
「……シャオ、ちゃん?」
「おう、ごめんな。先に謝っとくわ」
もう、声すら出ない私は、ただ彼に抱きつく事しかできなくて。
「事情を詳しく知らんから、Aに…Aさんに聞いた時はほんまに驚きました」
隠しててごめんなさい、勇気がなくてごめんなさい。
「これが本当に彼女が望んでる事なら、俺はここに来てません。それくらい、ご両親方の方が分かってますよね?」
ずっと言えなくて苦しかった、ずっと騙してるみたいで辛かった。
「あんたらが一番分かってやらないかん筈やろ!!娘の気持ち考えたれよ!!」
シャオちゃん、シャオちゃん。
「こんなに泣いて、震えて、こいつ今まで一人ぼっちで全部背負ってきて…」
もう、離れたくない。そばにいたい。あなたのそばに。
「俺はもう一人にせえへん」
「…っ、シャオちゃん」
「俺がそばで支えます、こいつに二度とこんな涙は流させません」
夢に見たお伽話より、私は今からの物語に夢を見たい。
「せやろ」
「うんっ。シャオちゃんがいたら、シャオちゃんのそばにずっといれたら、もう悲しくない」
「もう泣かんでええよ」
「うんっ!」
いつの間にか、もう周りの声は届かなくなっていて。
ただ、あなたしか見えなくて。
お互いの頰に触れ、最高の笑顔で口付けを交わす。
これからの物語に、想いを馳せて。
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作者名:芝谷 | 作成日時:2020年2月1日 16時