【夢短編集⑩】 (ページ10)

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tn…June bride.2 ページ10

トントンに誘われたのは遊園地だった。
なんだか、久しぶりに来るなぁ。

「…大丈夫?」

「大丈夫やで…問題な、ゔっ…」

ついはしゃいでしまって、ジェットコースターを何周もしていたらトントンが潰れてしまった。
ベンチの背もたれに頭を預けて、ゔ～…と唸る彼を見てつい吹き出してしまう。

「ねぇ、どうしたの?急に遊園地行こうなんて」

「…いや、あんま来たことなかったしな」

隣に腰掛けて、冷たい飲み物を頬っぺたにくっ付けると大きくビクッと跳ねる。

「お前なぁ…」

「あははっ、でも気持ちいでしょ?」

ふと、トントンの視線に熱を感じた。
そっと頬を撫でられて、手を握られる。

「ちょっと、行きたいとこあんねんけど」

「え…うん」

急に雰囲気の変わったトントンに戸惑いつつも、手を引かれながら向かったのは夕空の中、ライトが点灯された観覧車。
少しだけ、何かを期待する。
それはロマンチックな言葉か、ありきたりなカップルのすることか。

「うわぁ、高いねぇ」

「…せやなぁ」

どこか上の空な彼を見ると、ずっとポケットに片手を入れていて。
気のせいか、夕焼けに照らされた彼の顔がほんのり赤い。

「ん"んっ」

「ふふっ、なぁに?どうしたの?」

彼を気遣うふりをして、内心ドキドキなのを隠す。
だって、今にも何かを打ち明けるぞって真剣な顔をしてるんだもん。

「…俺らさ、今は会う日を決めてデートしたりしてるやん」

「うん、そうだね」

まさか、一緒に住もうとか?
もちろんイエスに決まってる。

「毎週末は、Aが泊まりに来てくれるけど…俺は、その…」

無音のまま、観覧車はゆっくりと頂上に近づく。
私は、ただ黙ってあなたが続ける言葉を待つ。

「いつも、おかえりって言ってほしいねやんか」

「…うん、私も言いたい」

ふう、とため息一つ。
観覧車は、ついに頂上へ。

「これからもずっと、俺のそばにおってほしい」

立ち上がり、私の横に座る彼。
ポケットから取り出された真紅の小さな箱に、息が止まる。

「…っ、トントン」

「黙って、最後まで聞いてくれ」

彼の顔を見なきゃなのに、溢れる感情を堪えきれなくて顔を両手で覆う。

「A」

「うそぉ…こんなの……トントンっ」

「なんや、まだ言うてへんのに…」

あなたに伸ばす手を取られ、震える左手の薬指に指輪が通る感触。

「俺と結婚して、二人で笑いの絶えん家にせえへんか?」

こくこくと、涙を落としながら返事をする。
これからは、毎日こうして抱き合える。