【夢短編集⑩】 (ページ33)

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kn…Don't touch me ページ33

俺にとって煙草は嗜好品を超えて食事同様に当たり前に摂取するもんになっとって、それを取り除かれると自ずと禁断症状みたいなのが現れへん?

「シッマ、今からお互い先に触った方が負けね」

突拍子もないことを言い始めたA。
なんかのゲームかはいはいって流しとったし、触らんでも死なへんし煙草禁止されるよりマシやな…くらいに思っとった。

「どうせお前が先に折れるやろ」

「どうかなぁ?案外、強いかもよ?」

腰に手を当てて強気な態度、引き倒して…と思った時点でこれを狙ってんのかってすぐ分かった。
俺を挑発すれば、すぐ負けると思ってんねやろな。

「好きにせえ、俺からは絶対触らんからな」

男の意地やな、受けたからには絶対負けられへん。
しかも勝ちを確信したような顔した彼女に、負けてはおられんやろ。

「足、退けてくれる?」

「……お前なぁ」

お互い触れない、故に言われるのは分かるけど言い方ってもんがあるんちゃうか。
いつもやったら、わーいって座ってくるやろ!!
とか思いつつ、渋々ソファに寝転んどったのを座り直す。

「こっち寄らんとってもらえます?」

「だったらシッマがもっとそっちに寄ったら?」

「くっそ…」

普段せんような口の利き方しよってからに、煽って俺を負けさせるつもりなんやろうけど、覚えとれよ。

「…シッマ、吸いすぎ」

「あ"?」

「それと足」

言われて気づく、いつもよりハイペースで積まれてく吸殻に、胡座をかいた足をゆらゆら。

「しゃあないやろ」

「…イラついてる?」

「いや?イラついてへんよ」

イラついてはない、けど何か落ち着かん。落ち着かん事にイラついてんのか?いやでもイラつくのとはまたちゃうんよな。
あかん、考える頭も落ち着かんくて纏まらん。
気づけばまたすぐ煙草に火を点けようとする自分がいて、テーブルに置いたライターを取り上げようとするAの手が伸びてくる。

「シッマ、だ……」

我慢ってのはやっぱ性に合わへんな。

「……め」

細い腕を掴めば余裕で俺の指は回って、軽々と引いた体は俺の下でソファに沈む。

「…負けだよ?」

体重をかけんように馬乗りになれば、これを待ってたってような顔をしたAが俺の服を掴む。

「やったらこの手は何や?」

「……だって」

「お預けタイムは終わりにしようや、お前に触りたい時に触られへんのは煙草やめるんよりきっついわ」

そう言って体を沈めていけば、迎えるようにAの両手が伸びる。

「お前はまだ我慢せえ、罰や」