【夢短編集⑩】 (ページ24)

今日:30 hit、昨日:17 hit、合計:226,352 hit

shp…June bride.2 ページ24

週末は必ずショッピ君の家に泊まることにしている。
それはどちらともなく言い始めたことで、少しでも長く一緒にいたかったから。

「飲み終わったらコップ持ってきてね」

「ん…」

朝起きて、まったりと珈琲を飲むショッピ君を見れるのも泊まった次の日の朝だけ。

「俺洗う」

「じゃあ私洗濯機回してくるね」

こんな夫婦ごっこみたいなのも、泊まった時だけ出来ること。
してる時は楽しいけど、ふと寂しくなる時がある。

「明日、仕事か…」

帰らなきゃ、と思う時だ。
いくら楽しくても、私たちは付き合ってるだけ。
同棲してしまえば良いんだろうけど、親は"同棲するなら結婚しなさい"と言う。
私だってしたい。
でもそれは私から言って良いことなのかも分からなくて、結果言えずじまいで終わってしまう。

彼と過ごす時間は幸せだけれど、帰る時間が近付けばそれも悲しみに変わってくる。

「…どうしたん?」

「ん…」

彼を困らせたくなくて、だけど寂しさを堪えきれず甘えるように抱きつく。

「…A、帰りたくない?」

「…んっ」

けれど彼にはバレてしまってるから、そっといつも優しく言い聞かせてくれるの。

「そっか…じゃあちょっとドライブしよか」

あれ?いつもならキスをしながら、またおいでって言ってくれるのに。
彼は私の手を取り引っ張り起こすと、上着を渡してきた。

「え…帰るの?」

「あっはは、強制的に帰されると思ったん?ええから、ほら」

背中を押されて家の外に出る。
いつものようにヘルメットを渡されて、バイクの後ろ座席に跨って、彼に抱きつく。
向かっているのは私の家とは反対の方向で、流れる景色を見ていれば見覚えのある場所。

初めてピンキーリングを貰った、夜景が見える海辺。
そこにバイクを停めると、あの日のように二人で堤防に座る。

「懐かしい～っ!!」

あの頃は冬で寒かったけど、今は夏が近づいてきていて、海風が涼しく感じる。

「帰りたくないって言ったよな」

「…うん」

「俺も、もう家まで送るのは嫌や」

そう言って、ライダースジャケットのポケットから取り出されたのは紫色の小さな箱。

「なーんだ?」

「…っ、ショッピ君の、色…」

「でも中はちゃんと…それ用やから…」

開けて見せてくれるそこにはダイヤモンドの付いた、指輪。

「今度は、薬指のやで?」

どうしよう、嬉しくて言葉が出てこない。
震える指に通る指輪を見て涙を溢す。

「結婚しましょっか」

「んっ…はいっ」

それ以外の言葉なんてない。