【夢短編集⑩】 (ページ3)

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os…June bride.1 ページ3

強がりとかじゃなく、少し前までは"俺は一人でも幸せにやってける"と思っとった。
そりゃ、独り身の生活が続けば自然とそう思うのは必然で、当然のように受け入れてきた。

俺は気難しいし、真面目過ぎる部分があるのは自覚しとるから、誰かと一生添い遂げるなんてほぼ無理な気がしとった。
俺が希望を持てても、相手は飽きてしまうかもしれんと。

そんな自分を丸ごと変えてくれたのは、隣で眠る君なんよ。

そっと頭を撫でれば心地良さそうな笑みを浮かべる。
緩く開かれた掌に、自分の手を重ねればぎゅっと強く握られる。

『ずっとそばにいてね』

ずっと、それは俺が言いたい台詞なんよ。
いつかこんな俺に愛想を尽かして去ってしまうんやないかって、Aちゃんが離れて行かんよういつも必死なのを知っとる?

そういえば、大喧嘩をしてAちゃんが家出したことがあったな。
あの時初めて格好悪い姿を見せてでも、この関係を繋ぎ止められるなら何でもするって強く願った。

『俺が間違いそうになったら、Aちゃんが言うてよ…』

『ちゃんと、聞いてくれる?』

あの時、何かが変わった気がした。
いや、確実に俺の中で考えが変わった。

「もう、一人でいいなんて思うことはなくなったなぁ」

俺を叱れるのも、正せるのも、撫でられるのもAちゃんだけ。
凝り固まった考えは、Aちゃんのあったかい愛情で解されて、溶かされて、色んな物の見方ができるようになった。

「良し悪しあるけどな」

君を前にすればどんな甘いお菓子よりも、君を欲して自制心を無くして求めてしまうし。
君が誰かに愛想を振り撒けば、冷静さを失う事もあったな。

━━ ブーッ ━━

枕元でAちゃんのスマホが震える。
ディスプレイを見れば、停電の時に初めて見た俺とのツーショットが今も変わらず設定されとって、笑みが溢れる。

「変えたらええのに…」

他にもたくさん、色んな写真を撮ったのに。
クリスマスも一緒に過ごして、焦げたケーキの代わりに甘いクリームをAちゃんごと味わったっけ。
あぁ、それの仕返しと言わんばかりの悪戯を仕掛けられたけど、甘いお仕置きで返したな。

一人では味わうことのなかった甘い時間を、Aちゃんとはたくさん過ごしてきた。
甘いお菓子はいつかは食べ飽きるけど、君との時間は飽きることはない。

「それは…Aちゃんも同じやろか?」

もっと二人で、もっとたくさんの甘い時間を、もっと長く、永く続けたいと強く願うようになった。