【夢短編集⑩】 (ページ19)

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zm…June bride.1 ページ19

「ねえ、ゾム～」

「ーっ!!」

「…今なんか隠した?」

「んーんっ!」

「…あっそ?来週私飲み会行ってくるね」

「んっ、行ってらっしゃい!」

「…うん」

何か言いたげな顔をして、Aは俺のパソコン部屋から出て行った。
あっぶな、パソコンで調べんくて良かったわ!!
慌てて隠したスマホをモニター前に置き、もう一度じっくり見る。

「どれがどう違うんか分からへん」

実は、Aに隠れてこっそりある物を用意し始めた。
それは最愛の人ができたらいずれ考えつく先、二人の今後を決めるもの。

「…あいつ、どんなんが好きなんかなぁ」

プラチナ、ゴールド、ピンクゴールド。
はえ～、素材だけでもこんなにあんのにデザインまでめっちゃあるやん。
本屋で雑誌を立ち読みしても、シッマについて来てもらって実際に店に見に行っても分からんかった。

『値段とかちゃうくて、彼女の好きそうなもんにしたらええんちゃうか?』

好きそうなもんな…、俺な。分からへんねん。
一緒に買い物に行ってもな、あいつがどんな気持ちで選んでるか知らんねん。
前なんか、買いたそうにしてた服を俺の我儘で買わされへんかった。

「俺…何も知らんかもしれん」

机に突っ伏して、一人呟く。
モニターの横に飾った、一枚の写真。
お花見に行った時に、二人でアイスを食べた時の写真。

「お祭りでも、俺に合わせてくれてたんよな」

どんなイベント事も、Aのやりたい事じゃなくて俺のやりたい事をした。
どんな我儘も、しょうがないなぁって笑って許してくれるAが大好きや。
どんなお願いも、ゾムの頼みならってAは聞いてくれた。

「…指輪くらい、あいつの好きなもんにしたいのにな」

こんなん、だれに聞いたって分かるわけない。
いや、Aの好みを俺以外の誰かが知っとったらそれはそれで許し難い。
俺が分かっとかないかんのに、そんなんも分からんでって笑われてまう。

『それかさ、ゾムが選んだもんやったらどれでも喜ぶんちゃうか?そんな子やん、お前の彼女』

落ち込んだ俺を励ましてくれたシッマの言葉。
ほんまにそうなんかなぁ。
俺が選んだもので、Aは喜んでくれるんかな。

急ぎ過ぎか、焦り過ぎか?
急に不安になってきた時、スマホが鳴った。
それは一緒の家にいるのに、AからのLINEで。

"何を悩んでるか知らないけど、がんばれゾム!"

「…くははっ、しゃあないなあ」

Aのために、もうちょっと頑張って考えよう。