zm…その甘さ病みつき(前編) ページ37
「…ねえ、ゾムやめて?」
「んーん」
「ゾム、お願いだから」
「やだ」
「ゾム!!いい加減にして!!痛い!!」
「甘噛みやんか〜、怒らんでもええやん」
私の最近の悩みは彼氏の噛み癖。
最初は首にも噛み付いてきてたので、さすがに人に見える場所はやめてもらったけど、犬歯が尖ってるから甘噛みでも場所や当り方によっては痛い。
「冬やしもう腕出さへんやろ?」
「出さないけど痛い、最近強いよ?」
「何でやろ」
あんたはハムスターかなんかか。
これのせいで友人とプールどころか温泉なんて行けるはずもなく。
「噛み跡消える前にまた付けるから温泉も入れないんだよ?」
「俺と風呂入らへんのに温泉行くん?」
「温泉は女の子とでしょ?!」
「何で俺がAの風呂中の裸見られへんのに女子は見れるん、不公平やろ!!」
「ごめん意味わからん」
「温泉は行かんでええやん、な?な?」
ソファの下に座る私を抱え込むように後ろから強く抱きしめてくるゾム。
「明日休みやし、ここ、ちょっとだけ、な?」
そう言って私の首筋に歯を当てるゾムを、私は拒否する事ができない。
許してしまっているし、寧ろ私もそれを好きになっている。
付き合い始めた頃よりも強くなった、ゾムの独占欲。
それは私のせい。
友達なら男女問わず食事に行っていたし、合コンの幹事を頼まれて幼馴染みの男友達と一緒に開催したりもした。
ゾムはそれを嫌とは言わなかった。
「うん」の一言。でも、まるで一人でお留守番を頼まれた小さな子どものような不安そうな顔をして俯いていた。
それが爆発したのが友達の結婚式の二次会だった。
あまり私の友達とは顔を合わせたがらないゾムが、迎えに来ると言い出した。
私はそれが嬉しかったので、迎えに来たゾムを友達らに彼氏だと紹介したその時だった。
男友達の一人が「幸せになれよ」と私の頭を撫でたのだ。
『Aは俺のやのに!!』
家に帰ってから、ゾムは私に何度もそう言いながら泣くように一晩中深い愛を注ぎ続けた。
それからだ、自分のだという印を私の体に付けるようになった。
可愛らしいキスマークではなく、噛み跡で。
私はもう男友達とは同窓会でない限り会わないようにしたし、女友達でも終電前には帰るようになった。
「もうそんな心配される事ないのに」
「はえ?別、心配とかしてへんで?」
「え?取られたくないとかそんなんで付けてるんじゃないの?」
「くははっ」
「…ゾム?」
「可愛え、Aはほんまに可愛えなぁ…くくっ」
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作者名：芝谷
| 作成日時：2019年11月6日 19時
