【夢短編集②】 (ページ29)

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kn…刺激的な甘さ(前編) ページ29

お互い仕事終わりにシッマの家に泊まる日のこと。
夕飯を済ませたのでシッマから先にお風呂に入り、私はその間に食器の片付けと洗濯機を回そうと思った。

脱ぎ捨てられたスーツを拾い、パンッと払った時だった。
ぽとりと名刺サイズのものが落ちた。

「……クラブ、ビジュー…?」

女の名前と、名刺から仄かに香る女物の香水。
明らかにキャバクラ系のものだとすぐにわかり、状況を飲み込んだ瞬間にシッマのスマホがLINEの着信を知らせる。

「……コネちゃん、だとぉ?」

画面に表示された文面には"寂しいから早く会いに来てね、コネちゃん"とハートマークびっしりだった。

「シッマぁぁあ!!」

「ぅおああっ!!ビビったあ!!なんやねん!Aも一緒に入るか?」

「あんたまた風俗行ったね!?」

怒りに任せて風呂場のドアを開け、呑気に湯船に浸かって鼻歌を歌うシッマに詰め寄る。

「は?何で?」

「この名刺とこのLINE何よ!!」

見つけたばかりの証拠を目の前に突きつけると、意外にもシッマはなーんだとお気楽な返事を返してきた。

「この前先輩に連れてかれたやつやんけ。あとそれな、いっぺんも返してへんで?」

「わかんないでしょ!?」

「見たらええやん、ほれ」

ロックを解除してそのまま渡される。
え、本当に見ていいの?と躊躇っていると、シッマがお風呂から上がった。

「かまへんって、別に嫌ちゃうしな。やましい事ないし」

脱衣所で体を拭くシッマの背中を見つつ、こんなに騒いでしまったのだから見なきゃ多分終わらないと思い、アプリを開く。

トーク一覧には見知った名前やアイコンから男性とわかるものだったり、怪しい女性の名前はなかった。
名刺と同じ名前をタップすると、シッマが言った通り一度も返信はされてなかった。
むしろ内容も、コピペされたように同じ文章だった。

「営業メールみたいなもんやって。悪ノリした奴が登録しよってんけど消しても来るし放ってん。向こうも仕事やからな」

「…ごめん」

「いや?怒ってへんで?」

部屋着に着替えて、まだ髪が濡れたままのシッマが洗面台に寄りかかって私を見つめる。

「確かに付き合いで行かなあかん時もあるけどな、だいぶ断ってんで?」

「…うん」

「どないしてん、しょげてんの?」

「…ごめんなさい」

「あっはっはっはっ、そんな気にせんでええやろ!こんなん別に怒らへんって俺」

「…シッマぁ」

「なぁに、怒ってへんって」

シッマは優しく私の頬を撫でる。