【夢短編集②】 (ページ10)

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起きて…ci ページ10

「A～、ただいま～っ」

とか言ってみたり。
別に同棲してるわけやないけど、ちょっと言ってみたかった。

「…あれ?」

ただいま～とか言うて玄関の外に閉め出されてる虚しい男なんですけど、このままやったら。
呼び鈴を鳴らしても返事がない。

「A～!!開ーけー、てぇ…あ」

「あら、お宅…」

「あ、すいません。お世話になってます、Aの彼氏です」

「あぁ!Aちゃんの、やだイケメーン!!…本当?」

疑われてるやん、開けてーとか言って玄関の外で立ってるから疑われてるやん!!
おばちゃんめっちゃ見てくるやん、俺これドラマで見たことある。

「でも最近、長身の変な人がって…」

それ俺ちゃう!!
A～!!彼氏が疑われとるぞ!!起きてー!!

「いや、ちょっと外出てて!これ鍵!!ねっ?」

「あらやだ本当、ごめんなさいね～?」

「いえ～、それでは失礼しま～す」

あっっぶな!!
良かったー、鍵預かって出とって!!
休みの日、Aの家で寝とったら仕事で呼び出された。
隣で寝てたAが、私寝てるかもしれないからと鍵をくれた。

けどさ、けどさ。
起きて朝食作って待ってて、おかえり～っとかあってもええやん。
ちょっと期待したんやで。

「ほんまに寝とるやん」

昨日夜更かしさせたのは俺やけどさ、起きろや。
タンクトップだけはさすがに風邪引くやろ。

「こら、お前が起きひんからストーカー扱いされたやろ」

「ん～…」

え。耳塞がれた、コネさんより声量ないと思うで?
布団から出た肩を指でなぞると、しっしってされた。

「お前なぁ……ん?」

壁にへばりつくようにして寝てたAの腕の中に、あるのは、俺の服。
さっきまで着てた俺のジャージ。
可愛いとこあるやん、ちょっと!!もう!!

「A～っ、そんな俺が好きやったか～!!」

「……っさいな、もう!!」

「いった!!殴んなよ!!隣のおばちゃんに褒められてんねんぞ、あらまぁイケメンねって。どうすんねん、鼻折れて不細工なったら」

「ぶふっ……くくくっ」

「起きた?」

「起きた、起きた。あ、やべ」

「なん?」

「チーノのジャージが私のヨダレだらけに」

「きったな!!おい!!」

「汚いとは何よー!!」

「ヨダレまみれにした罰を受けてもらおか」

「やー!!くすぐったいってば～」

寝起きのAに噛みつくように口付ける。
すぐ俺の背中に腕を回して答えてくれる、起き抜けはめっちゃ素直なんよな。
普段はちょっとツン。

泊まりのええとこって、そういう違いが見れるから好きや。