もう離れないで【zm】 (ページ30)

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二十九話ページ30

「そこであの総統が言う言葉がたまらなくかっこいいんすよね。」

『分かる。私そこ号泣しちゃった。』

買うべきものを買い終えた後、喫茶店に寄ってチーノ君との談笑会を開いた。
彼とは本当に趣味が似ていて馬が合う。好きな映画や、家具、音楽まで似ているなんて、前世が双子だったんじゃないかと本気で疑うレベルだ。

『私、チーノ君と友達になれて嬉しいよ。こんなに楽しい気分になれたのは久しぶり。』

「わあ、ありがとうございます。俺、正直Aさんとこんなにも仲良くなれるなんて思ってませんでした。」

『私も。今日会ったのも何かの縁かもね。』

この喫茶店はチーノ君の行きつけの喫茶店で、「Aさんも絶対好きになりますよ。」って言われたから来てみると、一瞬で虜になってしまった。
自分が好きなレトロな雰囲気、それに加えマスターが入れるコーヒーがまた美味しい。なんて最高なのだろう。

「あ、そういえばAさんゾムさんと結婚前提に付き合うことになったんすね。」

なぜ、半日前の出来事がこんなにも早く広まっているのだろう。

『そうだよ。』

「僕、めちゃめちゃいいこと考えちゃったんですよ。」

『チーノ君めっちゃ悪い顔してるよ。一体なにを企んでるの？』

「それはですね、ずばり “ゾムを嫉妬させよう大作戦” です！」

なんとも正直な作戦名だ。

『知ってる？ゾムって本当に嫉妬深い生き物で、嫉妬されると後々酷い目にあわせられるんだよ。』

「まあまあ、いいじゃないですか。この作戦を執行させるだけでいかにゾムさんがAさんのことが好きか確かめられるんですから。」

チーノ君、さっきよりもずっと悪い顔してるよ。

でも、久しぶりにゾムの嫉妬全開の顔を見るのは悪くない。
いや、むしろ見たいかもしれない。

少し考えた後、チーノ君に言った。

『ねえ、その作戦詳しく聞かせてよ。』